476:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:29:49.63 ID:CaLDwjtG0
紺之介「そこまで自己評価の低いやつだったか?」
彼の目には目新しく大人びた冷静さを保つ乱怒攻流の姿がそこにあったが、揚げ足をとるような返答に彼女はついに頬を膨らませて大声を上げた。
乱怒攻流「なによっ! せっかく人が心配してあげてるのに! 偶には休まないと本末転倒だって言ってあげてるのが分かんないの!? というかあんた毎日そんなになるまで素振りして汗臭いったらありゃしないのよ! さっさとその汗流してきなさい!」
477:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:30:47.51 ID:CaLDwjtG0
……………
紺之介「まだいたのか」
478:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:31:48.58 ID:CaLDwjtG0
紺之介「風呂好きだとは知っていたがまさかここまで長風呂とはな。のぼせないのか?」
透水「これくらいでは全然……それに久しぶりのお風呂でしたし」
紺之介「そうか」
479:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:33:07.36 ID:CaLDwjtG0
その透水の切望すら湯に流すように無視した紺之介。が、徐々に己の耳元に顔が近づいてくるのを感じてようやく目を開けた。
紺之介「なんだ」
透水「ふぇあっ……! ぅ、もしかして眠ってしまったのかと……」
480:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:34:19.34 ID:CaLDwjtG0
透水「なんで、そんな寂しいこと言うんですか。刀を集めることにわくわくしたりとかしなかったんですか」
紺之介は俯いてしまった透水を細目で見つめつつ懐かしむように旅の記憶をなぞった。
紺之介「高揚感、か……最初はあったかもな。だがそうも言ってられなくなった。ただそれだけの話だ」
481:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:37:49.32 ID:CaLDwjtG0
そして四半時足らずして湯から腰を浮かせる。その様子は自らに時間がないことを行動にして示しているようでもあった。
その場にいる者が対局たる長湯であったため尚更のことと早足が映える。
透水は焦り思わず言葉選ばずして彼を罵った。
482:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:38:47.32 ID:CaLDwjtG0
紺之介「フン。少なくとも今ばかりはつまらぬ人間で上等だ」
当然紺之介も彼女の内を理解してはいたのだがあえて拗ねるようにしてそっぽを向いた。
そのままとうとう脚も湯を離れる。
483:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:39:29.27 ID:CaLDwjtG0
透水「……私は海とお風呂が大好きです」
背中に張り付くように呟かれたその言葉に紺之介は歩みを止めた。
紺之介「知っている」
484:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:40:58.06 ID:CaLDwjtG0
透水「それは将軍さまと一緒にいたときからそうに違いなかったのですが……暫く導路港にいてもっと大好きになった気がするんです。この気持ちはきっとこの身体にならないと分からなかった」
先の焦りの反動かその声はいつもにも増してか細く繊細につづられる。
透水「愛栗子ちゃんのお話を聞いてて思ったんです。だからもし、私にとってのそれが愛栗子ちゃんの紺之介さんへの想いなら……それはとっても素敵なことだなって……紺之介さんも愛栗子ちゃんのことが大好きなんじゃないんですか?」
485:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:42:02.56 ID:CaLDwjtG0
紺之介「無論。やつほどの美刀、この手中に収めんと奮闘してここまで……」
そこまで口にして紺之介は目を見開く。
彼は己が何のために歩みを積み重ねてきたのかを思い出したのである。
486:名無しNIPPER[saga]
2020/02/10(月) 18:42:44.34 ID:CaLDwjtG0
紺之介「フッ」
紺之介は言葉を詰まらせたかと思うと唐突に短く鼻笑いをこぼした。
透水「ふぇ? どうしたんですか……?」
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