210: ◆hs5MwVGbLE[saga]
2019/04/21(日) 09:32:53.69 ID:f3jC59Mz0
………………
それは遡ること十年の時。
『強者』を求め、そして己もまた『強者』であることを極めんとした男、光源氏。
211:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:33:40.47 ID:f3jC59Mz0
道場とは本来力なき故に教えを請う者を歓迎する場所であるべきところだが、源氏は師範という立場でありながら尚も己を過剰に磨くための立会いを繰り返し門下生に深手を負わせ続けてきたのだ。
そのことを師に指摘された源氏は逆上。遂に己の師すらその切っ先の錆としてしまう。
そして肉塊と化した師に目を落としたとき源氏は一人悟った。
212:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:34:19.79 ID:f3jC59Mz0
しかし当然のことながら彼は途方に暮れていた。
師をも超えた彼の狂刃と渡り合う相手など武士が消えゆくこの幕末の世にはそうそう現れなかったのである。
そうして見つけた退屈しのぎの熊殺しにも飽きてきた頃、彼は獣道を歩く一人の男と遭遇した。
213:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:34:57.51 ID:f3jC59Mz0
梅雨離 最高 -つゆりもりたか- 紺之介の父である。
最高は熊の血滴る源氏の刀を見て戯けた様子で軽く両腕を挙げた。
最高「ははっ、まいったねぇ。この辺は獣の通りが少ないって聞いたモンだから身を隠すのに丁度いいと思ってたんだが……まさか熊殺しの方に会っちまうたあな」
214:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:35:40.85 ID:f3jC59Mz0
…………………
紺之介「幼刀と戦うこと……だと?」
源氏「そうだ。最高は俺のぼやきを聞き入れそれを成すための方針を与えてくれたってわけだ」
215:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:36:40.92 ID:f3jC59Mz0
…………………
最高「だかな……俺の息子はもっとつえーぞ」
彼が先ほどまで語っていた幼刀の伝説を感嘆としながら聞いていた源氏は一時眉を顰めた。
216:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:37:20.70 ID:f3jC59Mz0
最高「俺は美刀を愛し、先祖にまみえるため故に幼刀を手に入れようとしたが露離魂を持たぬ俺がそれらを手中に収めたとてそれはただの美刀と成り下がってしまうことに気がついた」
最高「だから俺は、同じく美刀を慈しむ志を持った息子の紺之介に全てを託すこととした」
最高「だが息子まで盗人とするわけにはいかんだろう? だから他の連中にこの児子炉以外の刀を一時隠してもらうこととしたのだ」
217:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:38:07.75 ID:f3jC59Mz0
最高「源氏と申したか……幼刀を追うならそのときは覚悟しろ。お前さんはいつか必ず紺之介と衝突する。息子は先十五年と経たぬうちに元幕府の連中に頼られる剣豪となる。この俺のようにな」
忍ぶ為に山道へと入ったというのが嘘かのような高笑いを上げて最高は息子を褒め称え続けた。
彼の倅と嗜好の話は流し耳に聞いていた源氏であったが彼の発言の一部に触発された。
218:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:39:25.07 ID:f3jC59Mz0
源氏「最高おめェ……その幼刀児子炉を持ってこれからも逃走し続ける気か? ってことはなんだ……そんだけ溺愛してる小僧にも、もう今後一切顔合わせする気はねぇんだな」
最高「……何が言いたい」
219:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:39:51.34 ID:f3jC59Mz0
逃げるような獣脚に紛れて源氏は再び口を開いた。
源氏「その小僧に合わせてやるって言ってんだ。あの世でな」
最高「ほう?」
220:名無しNIPPER[saga]
2019/04/21(日) 09:40:28.73 ID:f3jC59Mz0
……………………
源氏の語りにて紺之介は悟った。
紺之介「つまり、父は……」
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