155:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:15:44.72 ID:sLYD87sq0
透水瞬時に海へ飛び込む。深く潜りて沈みゆく紺之介の肩を持つ。
紺之介(……なるほど)
水の中で彼が見たものは人魚のような幼刀だった。水を裂き水に溶ける刀との伝説、ここに理解を得る。
156:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:16:23.79 ID:sLYD87sq0
…………
海上抜けて浜。一先ず華蓮と月一を見送りながら紺之介服を絞る。
157:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:16:58.25 ID:sLYD87sq0
紺之介「そこでしょげている背嚢の働きっぷりを察してこちらにも事情があることは分かってもらえただろう。少しばかりお前らのことを利用させてもらってな……だからそれは受け取れん」
紺之介「それに海賊から多少海賊させてもらってな。見逃す代わりに積み金を失敬したんだ。これ以上は求めん」
皮肉たらしく冷めた笑みを浮かべた彼に二人がそれ以上問いかけることはなかった。
158:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:17:34.10 ID:sLYD87sq0
愛栗子「紺、これからどうするのじゃ」
紺之介「あの漕ぎ手には俺たちのせいで災難な思いをさせたからな……一先ず新しいのが来るのを待ってまた導路港へと帰るとするか。それまでそこの背嚢を慰めてやれ」
愛栗子「ふむぅ〜……アレは暫くあのままじゃと思うがの〜」
159:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:18:12.40 ID:sLYD87sq0
透水「はい……」
紺之介「お前はあたかも俺がこの場所に来るのを知っていたみたいだったが……」
彼に問われた透水は手を後ろに組んでしばし波の方向へ歩み寄ると懐かしそうな顔つきで話し始めた。
160:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:18:53.12 ID:sLYD87sq0
紺之介は彼女の奇怪な昔話に眉をひそめる。
第一にして考えられるのは人違い。己ではない、別の『こんのすけ』なる者の存在。
しかしながらその説を提唱するには彼自身が今この場に辿り着いた事実すらも偶然の産物という事となる。
161:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:19:25.90 ID:sLYD87sq0
この謎を解き明かすには彼女から更なる話を聞き出すしかない。それを悟った彼は質問を重ねた。
紺之介「海賊連中がお前を網にひっかけたと聞いた。それは本当か?」
162:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:20:22.47 ID:sLYD87sq0
透水「元々持病を患っていたようで、おそらく、二年ほど前に……。その人は私と同じだったんです。水が大好きで、海を愛していました」
透水「だからその人の死に際に私から頼んだんです。もう一度誰かに私を預けるのではなく、私を海に沈めて欲しいって……あの人は言っていました。自分が亡くなった後は知人に灰を海に撒いてもらうと……ですから、あの人はきっと今頃この海と一つになっているんです」
透水「あの人とこの海から離れたくなかった。私も一緒にこの海と一つになりたいって……でも、私の納刀状態でも発動するこの『刀』がそれを許してくれなくて……」
163:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:21:31.19 ID:sLYD87sq0
紺之介(あの服のような何かがあいつの『刀』だったのか。海でも朽ちなかったのはそのためか)
彼女の運命の皮肉さに紺之介は短いため息を漏らした。
彼も見たその泳ぎから水にすら溶けると謳われた彼女はその名と伝承の通り水中でも生きれる身体を手にした代わりに完全に一つとなることを水に拒絶されてしまったのだ。
164:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:22:11.84 ID:sLYD87sq0
紺之介は透水の隣に立ち彼女の頭に手を置くとこれから彼女の生きる道をしめした。
紺之介「この後の話だが、とりあえずお前を売っていた商人のとこまで同行してもらう。どういう奇天烈が俺たちを引き合わせたかは結局分からんままだが、お前はもう俺のものだということには変わりない」
165:名無しNIPPER[saga]
2019/03/25(月) 05:22:43.24 ID:sLYD87sq0
紺之介「だから鞘は預かっておく。だが、お前はここに残れ」
透水「へ」
紺之介「お前には俺たちの旅の終わりまでにあそこの背嚢の笛を探してもらう。できるだろ?」
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