39: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:23:03.40 ID:mYk8szNr0
テスト期間に行ったボーリングでハンデと言って左手で投げて、あっけなく惨敗した鹿島には、残念賞として新しいグリップと安全のお守りを贈っておいた。
友人のラケットにはその新しいグリップが巻かれ、かばんにはお守りがついている。
成績は同じぐらいでパッとしないが、テニスにおいては中々センスのある彼には怪我だけはしてほしくなかった。
真剣な顔で黄色いボールを追いかける友人の背中を見ながら、今日もテニスコートの脇を抜けて図書館へと足を向ける。
40: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:24:33.13 ID:mYk8szNr0
春の晴れた土曜日は心なしか開架室も明るく、大学全体に活気が戻ってきたようだった。
昨日の夕方はキャンパスの至る所で、大学生が土日の新歓に誘うためギラギラさせて新入生を探していた。
41: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:26:06.27 ID:mYk8szNr0
「もしかして元々勉強嫌いじゃなかった?」
少し伸びて肩下ほどの長さになった髪を手櫛で整えながら先生は言う。
「んー、そうかもしれません。自由研究とか自分の好きなことを調べるのは好きでした。」
「へー、だからあんまり文句も言わずにしっかり勉強してるんだね。塾の生徒の中には高校3年の夏を過ぎても、言われてしかやらない子もいたから。」
42: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:26:41.13 ID:mYk8szNr0
春も過ぎ去って、だんだんと湿気と暑さが辛くなってくる。
が、図書館の中はいつも一定の湿度と気温が保たれているため、とても快適である。
1階の休憩室でこちらの要求を無視して、一方的に買ってもらった甘ったるいイチゴオレを飲みながら、佐藤さんと一息ついていた。
43: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:33:25.14 ID:mYk8szNr0
横でクスクスと笑っている彼女を見た時、不思議とこの大学に入りたいと思った。
自分もこの大学に入れたら、楽しく過ごせるかもしれない。
テニスが上手くなくたって、勉強が出来なくたって、こんな風に笑って過ごすことが出来るかもしれない。
44: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:34:17.28 ID:mYk8szNr0
「ねぇ、佐藤先生。」
「ん?どうしたの?」
「僕、志望校はこの大学にしようと思います。」
「え?」
45: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:34:50.69 ID:mYk8szNr0
「じゃあそろそろ休憩終わりにしよっか。」
佐藤さんは携帯で時間を確認して腰を上げた。
僕も甘ったるいイチゴオレの空き箱を捨てて、腰を上げる。
46: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:41:18.98 ID:mYk8szNr0
夏休み前になると大抵の3年生は部活を引退する。
鹿島も個人戦では良いところまで行ったそうだが、シード相手とあたり彼の部活は終わった。
後日、後輩からもらった寄せ書きを自慢しに来た。
47: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:41:47.16 ID:mYk8szNr0
そんな時に、4月初めに受けた模試の結果が返ってきた。思わず頭を抱える。
模試を受けた時点では、近くの大学から選んだ中の一つではあったものの、現実を知る。
模試の結果を受けて各々が一喜一憂しているうるさい教室で、鹿島が話しかけてきた。
48: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:42:37.09 ID:mYk8szNr0
あらゆる先生から「夏休みが大切な時期だ。」と散々念を押されて夏休みを迎えた。
一緒に帰りながら鹿島はこの夏からの生活を案じている。
今まで部活に打ち込んでいたこともあり、自宅で勉強する自信がないらしい。
49: ◆PeRWG5nqdc[sage saga]
2019/01/12(土) 18:43:03.97 ID:mYk8szNr0
「俺は多分自宅で勉強するのは無理だ。」
「そうはいっても勉強せざるを得ない。」
「うん、そうだな。」
「じゃあ頑張れ。」
50Res/33.87 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20