【モバマス】水曜日の午後には、温かいお茶を淹れて
1- 20
52: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/19(水) 20:16:14.98 ID:MnCJ5f3U0
6.Camellia sinensis

 時は流れ、十二月、ある水曜日の午後。
 私は長い廊下を歩く。廊下のいちばん奥の扉の前には、ちひろさんが立っていた。

以下略 AAS



53: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:18:04.80 ID:MnCJ5f3U0
「……御足労を……ありがとうございます、相葉さん、ええ、今日は、何曜日ですか……?」

「今日は、えっと、水曜日です、今日の午後、ちょうど、みんなで打ち合わせをして、そのあと私が代表でお見舞いに」

「そうでしたか。……水曜日……」
以下略 AAS



54: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:19:26.66 ID:MnCJ5f3U0
「用意ができました」ちひろさんがお盆を手に入ってくる「急須と湯のみ、ケトルをお借りしました。お茶は先日のお見舞品でいただいたものです」

「ありがとうございます」

 プロデューサーさんは嬉しそうな声をあげる。
以下略 AAS



55: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:20:32.43 ID:MnCJ5f3U0
「そう、だったんですか」

 私の声は少し暗くなった。やっぱり、私たちは、あぶれてしまったお荷物だったんだろうか。

「落ち込む必要はありません。オーディションやスカウトで見いだされたなら、貴方たちは確実に輝くための才を持っているということです。たまたま、巡り合わせがよくなかっただけのことですよ。……ですので、そういう事情なら、その四人を一時的に任せてくれないか、と無理を言って、私は皆さんと共に歩むことにしたのですよ」
以下略 AAS



56: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:23:16.86 ID:MnCJ5f3U0
 あっという間に時間は過ぎゆき、プロダクションの冬のフェスの当日が訪れた。私たちユニットの五人はほかのアイドルの皆と一緒に円陣を組み、最初の曲を全員で歌った。そのあとのプログラム、私たちの新曲のお披露目では、フェスの全体衣装に加えて、それぞれがお花と葉のアクセサリーをどこかに身に着けてステージに臨んだ。


「……みんな、今までで一番綺麗に咲こうね」

以下略 AAS



57: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:24:39.56 ID:MnCJ5f3U0
---

 私達ユニットのメンバーはお通夜とお葬式に出席し、それから先は、ちひろさんから納骨や、そのほか様々のことが終わったことを教えてもらった。プロデューサーさんともう会えないという実感が現実味を帯び、そしてそのことが当たり前の日常と同化したころ、次の春がやってきた。
 木々は新しい葉をつけ、花を咲かせる。別れがあり出会いがあり、新しいことが始まる季節。慌ただしいけれど、うきうきすることも多い季節。
 私たちは、次のイベントに向けたユニット活動に加えて、個々人の活動も活発になり、忙しい日々を送っていた。
以下略 AAS



58: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:25:54.91 ID:MnCJ5f3U0
 私たちのプロデューサーさんの遺品は、形に残らない。
 私たちとプロデューサーさんが居た場所も、もうない。
 私たちのユニットの活動のどこにも、プロデューサーさんの名前は残っていない。プロデューサーさんが私たちをプロデュースしてくれたことを知っているのは、私たちしかいない。
 プロデュースの証として残っているのは、私たちというアイドルそのものだけ。

以下略 AAS



59: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/19(水) 20:31:16.06 ID:MnCJ5f3U0
おつきあいいただき誠にありがとうございました。
楽しんでいただけたならば幸いです。

関連作品「先輩プロデューサーが過労で倒れた」もよろしければお楽しみください。
時間軸を共有しております。
以下略 AAS



60:名無しNIPPER[sage]
2018/12/19(水) 21:46:26.29 ID:MmLorwpDO


寂しいけど、いいお話でした


61:名無しNIPPER[sage]
2018/12/20(木) 00:05:00.64 ID:XjQbmwWFo
乙乙
倒れたPってあの先輩Pだったのか
今回もすごく良かった


61Res/162.03 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice