71: ◆GO.FUkF2N6[sage saga]
2018/12/23(日) 21:40:11.41 ID:l63Jdi8N0
「この先に入っちゃだめだよ!」
仁奈ちゃんがいるはずの控室の前には、両手を広げて通せんぼする小さな門番がいた。
72: ◆GO.FUkF2N6[sage saga]
2018/12/23(日) 21:48:10.89 ID:l63Jdi8N0
「お願いやめてよ! 仁奈と約束したんだから! 志希おねーさんだけは絶対に中に入れないでって!!」
ビリっと電流が流れてドアノブから手を放す。
73: ◆GO.FUkF2N6[sage saga]
2018/12/23(日) 21:50:03.81 ID:l63Jdi8N0
今回はここまで。
次でラスト更新になると思います。
あと >>64 と >>65が重複してますね。申し訳ありません。
74: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 18:39:22.39 ID:9rFSBGbj0
✉
生放送がはじまった。
とくにトラブルもなく、にぎやかな空気に包まれて仁奈ちゃんの出番に近づいていく。
75: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 18:50:21.90 ID:9rFSBGbj0
「仁奈ちゃん、すっごく素敵なお手紙ありがとうございました! ……さて、今日は仁奈ちゃんと仲良しのスペシャルなゲストに来ていただいております。こちらの方です、どうぞ!」
皮肉なアナウンスとともに、おおげさなBGMが流れだす。あたしの出番の合図。
いつもみたいに笑顔をつくって、スタジオに向かう。
76: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 18:54:00.22 ID:9rFSBGbj0
「いっつもおいしいご飯をつくってくれてありがとうごぜーます。お勉強わかんねーことがあったら教えてくれてありがとうごぜーます。いっつも仁奈とお昼寝してくれてありがとうごぜーます。ライブのときに走って応援に来てくれて、ママにお願いしようって言ってくれて、ありがとうごぜーます」
「……」
「仁奈はこわがりで、できねーこといっぱいあって、心配なことばかりでごぜーます。でも、そんなときは志希おねーさんの気持ちになるですよ。志希おねーさんみてーになんでもできるママになりてーって。そうしていっつも勇気をもらってるでごぜーます」
77: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 19:01:06.84 ID:9rFSBGbj0
✉
ソファーの上からすやすやと寝息が聞こえる。
幸せそうな顔で眠っている、その小さな体に抱き着いてひと眠りしようか、なんて思ってみたけど、時計の短針は7の数字を突き刺している。
いまから寝るのはお昼寝とは言わないし、せっかく炊き上がったご飯が冷めてしまう。
78: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 19:04:36.73 ID:9rFSBGbj0
「志希おねーさん見てくだせー。仁奈、このまえの漢字のテストで100点とったんだー!」
「おおー。仁奈ちゃんはすごいねー」
ご飯を食べ終わって、おしゃべりをしていると小テストの紙を渡してきた。
79: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 19:07:09.66 ID:9rFSBGbj0
「……いや、だ」
瞼からなにかが溢れてきた。
あたしみたいな理解不能な生き物をママって呼んでくれて。
80: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 19:11:28.44 ID:9rFSBGbj0
──エピローグ
81: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 19:14:50.84 ID:9rFSBGbj0
✉
とっくにお盆を過ぎた墓地はしんと静まり返っている。
ママが亡くなってから1度しか来たことのなかったお墓は、綺麗に掃除されていた。
いったい誰が墓参りに来てくれてるんだろうか。
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