64: ◆GO.FUkF2N6[sage saga]
2018/12/23(日) 21:11:14.53 ID:l63Jdi8N0
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あれからというもの、仁奈ちゃんは隙あらば手紙の執筆に勤しむようになった。
どんなことを書いてるのか気になってのぞいてみようとすると、きまって手紙に覆いかぶさって見せてくれない。
もしかしてこれが反抗期ってやつ?
志希おねーさん、とても悲しいでごぜーますよ。
と、いうわけでやることもないので、テレビを見ることにした。
てんでやる気の感じられないバラエティ番組が終わると、ニュース番組がはじまった。
『一ノ瀬先生、このたびの新元素の件についてお話を伺いたいのですが──』
他に流すべき話題がないのか、ニュース番組にチャンネルを合わせると、あの人の話ばかり。
一ノ瀬先生がペラペラ元素の特性について語っているけど、マスコミや視聴者のうちにどれだけ理解できてる人がいるんだろうか。
連日同じことばかり聞いて、質問のネタが尽きたのかもしれない。
ニヤニヤしてる顔がチャームポイントらしいアナウンサーが、こんなどーでもいいことを訊きだした。
『一ノ瀬先生はアイドルをされている一ノ瀬志希さんのお父様だとお聞きしましたが、ほんとうでしょうか?』
一ノ瀬先生は少し困惑したように、ええそうです、と頷いた。
『志希さんはすごく奔放な方と言いますか、先生と同じ天才肌であるように私には思えるのですが、先生から見て志希さんはどのような娘さんなのでしょうか?』
『…………』
一ノ瀬先生は、あの人らしくない時間をかけてから、口を開いた。
『娘は──』
プツン。
電源を切った。
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