一ノ瀬志希「ママの気持ちになるですよ」
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72: ◆GO.FUkF2N6[sage saga]
2018/12/23(日) 21:48:10.89 ID:l63Jdi8N0

「お願いやめてよ! 仁奈と約束したんだから! 志希おねーさんだけは絶対に中に入れないでって!!」


ビリっと電流が流れてドアノブから手を放す。
ぐらりと視界が揺らいだ。

「仁奈ちゃんが、そう言ってたの?」

「そうだよ! だから入っちゃダメ!!」

……。
あー。

「にゃはは。ごめんねー、こわがらせちゃって。もう入るつもりないからだいじょうぶだよー。ねぇアケミちゃん、これからも仁奈ちゃんと仲良くしてあげてね」

そっかー。

あたし、嫌われちゃったかー。

そりゃそうだよね、どれだけ仁奈ちゃんの母親を責めたって。

あたしがいなければこんなことにはならなかった、それは揺らぎようのない事実なんだから。
あたしがサプライズでママを呼ぼうなんて思いつかなかったら。
ママにお願いしてみようなんて言わなかったら。

なにが知ったこと言わないでだ。
なにがキミの勘違いじゃないかだ。
思いあがっていたのは、あたしのほう。
結局、あたしの本質はあのときからなにも変わっていない。


──あんたみたいなバケモノに、あたしの気持ちなんてわかるわけないでしょ!


あたしが誰かを幸せにしようなんて、はじめから間違っているのだ。

ねぇ、ママ。
あたしはどんなことでもできるってママは言ったよね。
学者じゃないけど、大学でいちばん優秀な生徒にはなれた。
いちおう売れっ子っていってもいいアイドルにもなれた。

でもね。


「あたしね、ママみたいなおかあさんにはなれなかった、よー」




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