一ノ瀬志希「ママの気持ちになるですよ」
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75: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/26(水) 18:50:21.90 ID:9rFSBGbj0
「仁奈ちゃん、すっごく素敵なお手紙ありがとうございました! ……さて、今日は仁奈ちゃんと仲良しのスペシャルなゲストに来ていただいております。こちらの方です、どうぞ!」

皮肉なアナウンスとともに、おおげさなBGMが流れだす。あたしの出番の合図。
いつもみたいに笑顔をつくって、スタジオに向かう。


「はい! 仁奈ちゃんと同じ〇〇プロ所属のアイドル、一ノ瀬志希さんです!」

「にゃはは。どうもー志希ちゃんでーす」

「志希さんはいま仁奈ちゃんといっしょに暮らしているという話を聞きました」

「そうだよー。うらやましいでしょ」

うらやましいー、とノリのいいレスポンスが返ってきた。


「そういうところも含めていろいろお話を聞けたらな、と思います。それじゃ、こちらの席に──」

「あっ、待ってくだせー! 仁奈、志希おねーさんに渡してーものがあるですよ」

あたしに渡したいもの?
振り向くと、仁奈ちゃんがポケットからなにかを取り出している姿があった。

「ほんとうはママが来てくれるはずだったですけど、来れなくなっちまったです。でも、代わりに志希おねーさんが来てくれるって聞いたからもう1個お手紙を書いたでごぜーますよ」

手紙? もう1通?
あたしの疑問をよそに、仁奈ちゃんはその手紙を広げて読みはじめた。


「志希おねーさんへ。志希おねーさんはほんとにすげーです! いろんなこと知ってて、歌もダンスもできて、ご飯もつくれて、ほんとにほんとにすげーです!」

「……」

「ママもさっき電話で言ってたですよ。志希さんに怒られちゃった、行けなくてごめんね、さびしくさせてごめんね、志希さんはすごいね、これからは私も志希さんみたいなママになるからって。なんで謝ってるのかよくわかんなかったですけど、とにかく志希おねーさんのこといっぱい褒めてたでごぜーます」

「……」

「仁奈、その電話を聞いて志希おねーさんにお礼をしなきちゃいけないって思って。でもなにをすればいいのかわからなくて。だから志希おねーさんにナイショで手紙を書いてみたですよ」


いったいいつの間に?
そんなの決まっている。あたしが控室に行ったとき、あそこで書いていたのだ。
あたしにばれないように、アケミちゃんに通せんぼをお願いして。





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