82: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:10:30.52 ID:6W5BK61q0
続
83: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:32:47.13 ID:6W5BK61q0
【5】
その後俺は病院に搬送され、奇跡的に命を取り留めた。
医者は驚いていた。普通なら死んでいるはずの傷だったそうだ。
84: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:33:19.97 ID:6W5BK61q0
常にぼうっとしていて、話をしてもどこか上の空だった。
昔の思い出に関する記憶も、ほとんど失っていた。
一週間経たずして彼女は廃人に近い状態となり、入院した。
85: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:34:01.85 ID:6W5BK61q0
目を覚まして視界に入ったのは、見慣れた天井だ。
アパートと呼んでも違和感のない、ボロいマンションの木造の天井。
今日は日曜日だ。俺は、彼女とデートをした場所をふらふらすることにした。
86: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:34:35.65 ID:6W5BK61q0
まだ大学生の頃のことだ。
『アメジストドームって、外側はメノウっぽい見た目してるよな』
『実際メノウだよ』
87: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:35:05.55 ID:6W5BK61q0
『ケイ素♪ ケイ素♪ 二酸化ケイ素♪』
彼女はケイ素を多く含む物質が大好きで、鉱物やガラス製品等を収集していた。
好きなものを見て笑う彼女の表情を眺める度、俺は幸福感を覚えたものだった。
88: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:35:55.08 ID:6W5BK61q0
『このガラス、ヒスイを練り込んであるんだって!』
彼女はこの緑色のガラスで作られた皿やら花瓶やらを見て、思いっきりテンションを上げていた。
89: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:36:31.48 ID:6W5BK61q0
彼女だけで旅行に行かせるのは心配だったから、俺も遥か北陸の地についていった。
ガラスの研究をしている施設だとか、大学の研究室だとかに彼女は顔を出した。
学んだ知識を窓ガラスに活かすのだと、楽しそうに話していた。
90: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:41:40.51 ID:6W5BK61q0
「今日、彼女さんは一緒じゃないんですか? 珍しいですね」
ガラス細工屋の店員が俺に声をかけた。
91: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:42:58.48 ID:6W5BK61q0
「あれ、これ……」
とても綺麗な指輪が台に置かれている。
ガラス細工の装飾が細やかに散りばめられていて、目を見張った。
92: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:43:41.20 ID:6W5BK61q0
「これ、ください」
レジへ持っていくと、タグに書かれた値段よりもだいぶ安い額を請求された。
普段、この店はセールでもしない限りは値下げをすることはない。
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