88: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:35:55.08 ID:6W5BK61q0
『このガラス、ヒスイを練り込んであるんだって!』
彼女はこの緑色のガラスで作られた皿やら花瓶やらを見て、思いっきりテンションを上げていた。
『ほら、パンフレット見てよ! 富山県でしか作られてないんだって! ……普通、膨張係数が違ってたら割れちゃうのに、一体どうやってヒスイとガラスを……』
ちょっと嫌な予感がした。彼女が、富山に行くと言い出すのではないかと。
『……私、富山に行く! 折角の夏休みだもの!』
ああ、やっぱり。
インドア派の俺とは違い、彼女は行動力があるのだ。
富山って何処だっけ。とりあえず北陸だ。
受験が終わってから、すっかり地理の知識が頭から抜け落ちてしまっていた。
『あ、こっちのガラスも綺麗ね!』
白緑色のガラス皿の隣に、同じデザインの色違いの皿が並べられていた。
鮮やかな海緑色だ。こっちも富山でしか作られていないらしい。
『たっくんに似合うね! 1枚ずつ買おうよ!』
『うん、いいよ』
嫌いな色ではなかった。むしろ、好きな色だ。
――その皿は、今でもお気に入りだ。
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