79: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:08:37.86 ID:6W5BK61q0
殴って、防いで、切られて、でも不思議と痛みはあまり感じなくて再び殴って、蹴って。
しばらく揉み合った後、刃物を握っている遠峯の右の手首を掴んで壁に押し付けることに、俺は成功した。
『警察呼んでくるね!』
80: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:09:04.65 ID:6W5BK61q0
足の速さでは、俺はあいつより上だ。
けれど、彼女はあまり足が速くない。
遠峯が先に彼女に追いついてしまいそうだった。
81: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:09:33.08 ID:6W5BK61q0
奴は服のポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。
折り畳み式のナイフだった。
奴をギリギリで追い越し、俺は彼女の前に立った。
82: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:10:30.52 ID:6W5BK61q0
続
83: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:32:47.13 ID:6W5BK61q0
【5】
その後俺は病院に搬送され、奇跡的に命を取り留めた。
医者は驚いていた。普通なら死んでいるはずの傷だったそうだ。
84: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:33:19.97 ID:6W5BK61q0
常にぼうっとしていて、話をしてもどこか上の空だった。
昔の思い出に関する記憶も、ほとんど失っていた。
一週間経たずして彼女は廃人に近い状態となり、入院した。
85: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:34:01.85 ID:6W5BK61q0
目を覚まして視界に入ったのは、見慣れた天井だ。
アパートと呼んでも違和感のない、ボロいマンションの木造の天井。
今日は日曜日だ。俺は、彼女とデートをした場所をふらふらすることにした。
86: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:34:35.65 ID:6W5BK61q0
まだ大学生の頃のことだ。
『アメジストドームって、外側はメノウっぽい見た目してるよな』
『実際メノウだよ』
87: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:35:05.55 ID:6W5BK61q0
『ケイ素♪ ケイ素♪ 二酸化ケイ素♪』
彼女はケイ素を多く含む物質が大好きで、鉱物やガラス製品等を収集していた。
好きなものを見て笑う彼女の表情を眺める度、俺は幸福感を覚えたものだった。
88: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:35:55.08 ID:6W5BK61q0
『このガラス、ヒスイを練り込んであるんだって!』
彼女はこの緑色のガラスで作られた皿やら花瓶やらを見て、思いっきりテンションを上げていた。
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