75: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:04:43.30 ID:6W5BK61q0
『イネ科はね、土壌からケイ素を取り込むことで自分の体を丈夫にしてることがわかったのよ』
『ああ……なるほど』
76: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:05:27.12 ID:6W5BK61q0
時折嫌な視線を感じながらも、平和な高校生活を送ったように思う。
クォ・ヴァディスに悲哀の感情を売り渡したから、単に思い出せないだけかもしれないけれど。
俺達は隣県の大学を受験し、俺は理学部の地球科学科、彼女は化学科に進学した。
77: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:06:25.59 ID:6W5BK61q0
俺や坂田は理系の就職を諦め、営業をやることになった。
院に進むほどの情熱はなかったし、同じ研究室の院生の「院進したら余計就職先無くなるよ。専門分野と一致する仕事なんてほとんどないし、年食っちゃうからね」という言葉を聞いて、さっさと適当に就職することを選んだのだ。
就職活動が長引いて、卒論が進まなくなるのも嫌だった。
78: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:07:04.08 ID:6W5BK61q0
前方に、彼女とフードを被った男が口論になっているのが見えた。
2人はこちらに気づかず、男が彼女を無理矢理路地裏に引き込んだ。
『何してるんだ!!』
79: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:08:37.86 ID:6W5BK61q0
殴って、防いで、切られて、でも不思議と痛みはあまり感じなくて再び殴って、蹴って。
しばらく揉み合った後、刃物を握っている遠峯の右の手首を掴んで壁に押し付けることに、俺は成功した。
『警察呼んでくるね!』
80: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:09:04.65 ID:6W5BK61q0
足の速さでは、俺はあいつより上だ。
けれど、彼女はあまり足が速くない。
遠峯が先に彼女に追いついてしまいそうだった。
81: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:09:33.08 ID:6W5BK61q0
奴は服のポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。
折り畳み式のナイフだった。
奴をギリギリで追い越し、俺は彼女の前に立った。
82: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 00:10:30.52 ID:6W5BK61q0
続
83: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:32:47.13 ID:6W5BK61q0
【5】
その後俺は病院に搬送され、奇跡的に命を取り留めた。
医者は驚いていた。普通なら死んでいるはずの傷だったそうだ。
84: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/16(金) 22:33:19.97 ID:6W5BK61q0
常にぼうっとしていて、話をしてもどこか上の空だった。
昔の思い出に関する記憶も、ほとんど失っていた。
一週間経たずして彼女は廃人に近い状態となり、入院した。
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