彼女は窓フェチの変態だった
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1: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:46:37.21 ID:/ibNvBIF0

 【1】

 白い空間に、俺は立っていた。
 壁も床も純白で、天井はなく、青空が広がっている。かと思えば、音もなく白い天井がゆっくりとスライドしたりしていた。

 空中にも白い立方体やら球体やらが浮かんでいて、現実味がない。
 しかし、俺はそれらを不自然に思うことなく、歩き始めた。

 カツン、カツンと、俺の踵の音だけが響く。
 何処までも白い壁が続くのかと思ったが、奥へ進むと今までとは違う景色が見えた。

 壁が白いことは変わりないが、その壁にはいくつもの窓があった。
 それぞれデザインが異なっており、先に広がる景色もバラバラだった。

 西洋風のゴテゴテしたものもあれば、一般的な民家にありそうな窓もある。
 そして、壁の前には黒いコートを身に纏う1人の青年が立っていた。

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2: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:48:32.98 ID:/ibNvBIF0

「やあ」

 青年は微笑んで口を開いた。
 まるで昔馴染みの友人に話しかけるかのような、明るい声色だ。
以下略 AAS



3: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:49:03.24 ID:/ibNvBIF0

「君の名前は」
「好きに呼んでいいよ。僕は特定の名前をもっていない。かつてはあったような気がしたが、忘れてしまったよ」

 青年は肩を竦めて笑った。胡散臭い雰囲気の持ち主だが、不思議と悪い印象はない。
以下略 AAS



4: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:49:47.44 ID:/ibNvBIF0

 それは、何処かで聞いたことのある響きだった。
 思い出されたのは、気まぐれに受けた教養科目の授業の風景だ。
 教養科目の単位は既に足りていたが、仲の良かった誰かがラテン語の授業を受けたいと言っていて、自分も興味を惹かれたので受講していた。

以下略 AAS



5: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:50:44.76 ID:/ibNvBIF0

「僕は君の行く末を見届けることを楽しみにしているんだ。さあ、選びなよ。君は、まずどの窓へと進むのかな」

 窓、いくつもの、窓。そのほとんどに見覚えがあるような気がしたけれど、全く見たことがないものもある。
 ここが俺の心象世界だというのなら、何故俺の心には到底存在していなさそうなものがあるのだろう。
以下略 AAS



6: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:51:21.51 ID:/ibNvBIF0

 青い空、白い雲、緑の草原。小さな丘陵。Windows XPのデスクトップ背景を彷彿とさせる風景だ。

 XPを使っていた期間が長かったからだろうか。
 使うOSがVista、7、8、10と代替わりしていっても、Windowsと聞くと、俺は草原を連想する。
以下略 AAS



7: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:51:56.69 ID:/ibNvBIF0

 Windows XPを起動する度、この丘の向こうにはどんな風景が広がっているのだろうと、見えない先に思いを馳せたものだった。
 ここはBlissそのものではないが、よく似ている。

 丘の向こう側を見たい一心で、俺は進んだ。
以下略 AAS



8: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:53:30.31 ID:/ibNvBIF0

『探しているファイルがあるの。何処に保存したのかわからなくなっちゃって』

 女の子の声が、頭の中に響いた。
 同時に、ぼやけた映像が流れ始める。
以下略 AAS



9: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:54:11.88 ID:/ibNvBIF0

 遠い過去の記憶だ。まだ、XPを使っていた頃の。
 そうだ。俺は、この崖に潜って探さなければならないものがある。

 階層を降り、全ての道を探索し、どれだけ時間がかかったとしても。
以下略 AAS



10: ◆O3m5I24fJo[saga]
2018/11/12(月) 20:54:44.39 ID:/ibNvBIF0

 ツタは充分な太さと硬さがある。。
 これは決して千切れない。何故か、確信があった。

「『夢覚』だよ。夢を見ている時、その後の展開が何故かわかったり、現実とは違う常識がいつの間にか思考に定着していたりすることがあるだろう?」
以下略 AAS



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