19: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:14:40.70 ID:TYKVB7XU0
「春菜ちゃん!」
「……比奈さん」
20: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:15:08.57 ID:TYKVB7XU0
春菜ちゃんが、「一番合うメガネを用意させて欲しい」と言ったのがきっかけ。ライブで一緒にメガネをかけて立ちたいと、彼女は望んでいた。私達は、いつからかそれが約束事のようになった
一緒のステージに立つ機会が中々無くて、約束を果たすのが最後のライブになっちゃったけど
21: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:15:36.67 ID:TYKVB7XU0
『うっ……ぐずっ……』
『ひっ……ひゅぅう……うう……』
22: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:16:32.21 ID:TYKVB7XU0
腕を外して、二人は私の肩をたたいて舞台袖へハケる。二人の熱がまだ残っている。
『あー……その、これが最後の曲っス』
23: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:17:17.80 ID:TYKVB7XU0
歌い始める。緑色、私をイメージした色のペンライトが、大きく、ゆっくりと揺れていく
『always』の歌詞とメロディが、私の中の全部を、緑色の麓まで運んでいく
24: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:18:06.39 ID:TYKVB7XU0
―――
――
―
25: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:18:39.54 ID:TYKVB7XU0
宴もたけなわ、そろそろお開き。結局、この間に彼と話すことは出来なかった。
奈緒ちゃんのプロデューサーが泥酔している人たちのためにタクシーを呼んでいる。大変だなあの人も
26: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:31:53.66 ID:TYKVB7XU0
踵をそろえて歩く。こつこつという音が、二人分響いた
「電車に乗る?」
27: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 01:01:52.55 ID:TYKVB7XU0
また裏路地に入る。人通りはほとんど無くて、たまにランニング中の人とすれ違う程度。
「……いろいろ、思い出しちゃったな」
28: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 01:24:21.93 ID:TYKVB7XU0
◆◇◆
荒木比奈は王道が好きだ。ベタで、よくあるようで、みんなが好きなようなものが好きだ。この五年間で、僕はそういう風に彼女の事を捉えていた
29: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 01:25:43.88 ID:TYKVB7XU0
比奈のマンション前まで来る。流石に涙は引っ込んでいた。代わりに恥ずかしさとか、いたたまれなさが僕らの間にあった
僕の、プロデューサーとしての最後の仕事は、比奈を無事家まで送り届けること。それまで、涙を流したくなかったのにな
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