26: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:31:53.66 ID:TYKVB7XU0
踵をそろえて歩く。こつこつという音が、二人分響いた
「電車に乗る?」
「ん〜……今日は、歩いて帰りたいっス」
「わかった」
そう言うと、彼は足の向きを変えた。私も釣られて変える。駅までの道を外れて、人通りが少ない路地を歩く
「……最後のライブさ、最高だったよ。ありがとうって言うのはコッチだって、なんかくだらねぇことも思っちゃった」
「そうっスか……ありがとうございまス」
「こっちこそ、ありがとう。今まで本当に本当に、ありがとう」
「いやいや、こっちこそっスよ」
「いやいや」
「いやいや」
変な押し問答をしながら、歩いて行く。見慣れた家々を通り過ぎて、また大通りに出た
「あっ……」
「ここは……」
私達が、始めて出会った交差点に出た。私が彼に見つけてらって、スカウトされた、始まりの場所だ
「……何か、何度も通ってるのに、不思議と懐かしいや」
「アタシも……そんな感じっス」
青信号に従って、懐かしい場所を通り過ぎる。これからも通るだろうに、私も彼も、歩みが遅くなった。
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