88:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 18:16:24.69 ID:uC+MDGI60
-白糸台高校・麻雀部部室-
「私ね、竹井さんを鏡で観たんだ」
先ほど使用した雀卓の片付けをしていると、照がポツリと呟く。そろそろ日も欠けはじめたからと四人には帰路についてもらい、今は部室にいるのは照と私の二人だけだ。
89:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 18:17:37.68 ID:uC+MDGI60
照と初めて会った頃、照の私への呼称は『親切な人』だった。もっとも、この呼び方は鏡を使われる前からのものだ。おそらく私のことを氏名で呼びたくなかった照がつけたあだ名のようなものだろうし、自分の本質を言い表すとはあまり思えないが。
「性格の良い、いい性格してる人かな。ひねくれ者だと思う」
「なんだそりゃ、捻ったつもりか」
90:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 18:19:10.09 ID:uC+MDGI60
「でも、そういう風に強引に手詰まりにさせると逆に面倒になりかねない」
「どういうことだ?」
「人間、切羽詰まると本来とらない行動をとることがあるからね。そうなると鏡で観たものからだけでは到底読めない」
91:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 18:20:10.24 ID:uC+MDGI60
そんなこんなの会話をしながら部の備品一式を片付け終え、帰り支度を始める。帰路の連れに目を向けると同様に荷物を纏めるも、どう持って歩くか試行錯誤している様子だった。
「鞄持とうか?」
「じゃあ、お願い」
92:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 18:28:37.93 ID:uC+MDGI60
清澄の先鋒こと片岡優希は、準決勝から打点の高さを捨てて早さに拘る打ち方を実践してきた。照の連続和了を止めるためだったであろうその打ち方は、局が進むにつれて本人とその能力に馴染み、決勝ではこちらの想定を超える暴れっぷりを見せつけてくれた。
「東場の、特にトンパツの片岡の速度は驚異だ。ここは淡の絶対安全圏で東一局を凌いでだな……」
93:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 20:14:16.08 ID:uC+MDGI60
「たしかにこちら側、淡や尭深が好配牌で向こうが五向聴なんてなったときは相手に同情を覚えることもあるが、今回の相手にそんな情は必要ないだろ」
「違うよ菫。今尭深に例えたのは淡じゃなく片岡さん、五向聴は私」
「……?」
94:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 20:15:32.72 ID:uC+MDGI60
「なんだ?」
「いいや、なんでもない」
「そう言われると逆に気になるってのが人情だと思うが」
95:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 20:17:17.88 ID:uC+MDGI60
「失礼しました」
96:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 20:18:38.64 ID:uC+MDGI60
「ひ、弘世さん待って!」
足早に進んでいると、後方から聞き覚えのある、少し叫びに近いような声でお呼びがかかる。振り返ると、ブラウンのショートヘアをなびかせた女性が、小走りで近づいてきていた。
「宇野沢先輩、まだ学校に残ってたんですね」
97:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 20:19:38.05 ID:uC+MDGI60
なんと、大学に入ってからさらに大きくなったというのかこの先輩。
「って、違うよ! そんな悩みを聞いてもらいに来たんじゃなかった」
そうだった、わざわざ走ってきたんだから何か理由があってのことだ。
98:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 20:20:43.07 ID:uC+MDGI60
「さっき職員室でね……いや、あの、なんで私のおなかを見るの?」
「何でもないです。続けてください」
「そう? ならいっか。さっき職員室で明日も来るって貝瀬監督と話してたじゃない?」
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