89:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/03(金) 18:17:37.68 ID:uC+MDGI60
照と初めて会った頃、照の私への呼称は『親切な人』だった。もっとも、この呼び方は鏡を使われる前からのものだ。おそらく私のことを氏名で呼びたくなかった照がつけたあだ名のようなものだろうし、自分の本質を言い表すとはあまり思えないが。
「性格の良い、いい性格してる人かな。ひねくれ者だと思う」
「なんだそりゃ、捻ったつもりか」
「別に。一言でいうならこれだと思うだけ」
「ふうん」
二言じゃないかとも思うが、端的にというニュアンスだったろうしわざわざツッコむこともあるまい。それよりも、照の話で一つ、細かく言えば二つの疑問が浮かぶ。
「なあ、その竹井との賭けだが、そもそもなんで受けたんだ?」
いきなり何を言い出すんだろうとでも言いたげに、照が首をかしげる。
「竹井は、受けなければ長野から何度でも来ると言っていたが、あんなのはブラフだろう。普通は高校生の財力で出来ることじゃない」
「あぁ、そうだね。実際には手詰まりだと思う」
そうだろうとも。私が言うのもいささか難があるかもしれないが。
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