139: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:15:33.19 ID:MeNYOwih0
禅僧のような精神で黙々と取り組んでいると、14時を前にしてリーダーが「一旦チケット投げるのやめろ!」と叫んだ。
スタッフ全員の視線を集めると、リーダーは「おらおらいくぜえ!」と本番環境へのデータのアップロードを行う。
そうして目標としていたリリースは終わったわけだが、まだ出来ていない機能すらある状態だ。
作業をストップするわけにはいかない。
140: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:18:10.62 ID:MeNYOwih0
2017年12月15日。金曜日。
だと思う。おそらく。
目覚めると、体が動かなかった。
141: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:20:04.38 ID:MeNYOwih0
ひゅうひゅうと微かな呼吸が寝室に薄く響いた。
何とか気力を振り絞ると指先がぴくりと動く。
とはいえ起き上がるほどの筋力はないらしく、ベッドの上でもがくのみだ。
「ううう」
142: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:21:21.13 ID:MeNYOwih0
「戸庭! 救急車! 呼ぶからな!」
そう言うアンチョビに、俺はおかしいと思い「会社に行く」と返した。
そういえば今日は監督とも会うのだ。
病院へ行っているような場合ではない。
143: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:30:16.14 ID:MeNYOwih0
初めに見えたのは白い天井だった。
次に「戸庭っ」と声を上げるアンチョビの顔が見えて、首を動かすと室内にベッドが並んでいるのがわかった。
どうやらここは病院の一室らしかった。
144: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:32:01.66 ID:MeNYOwih0
なるほど、俺は、過労で倒れた。
アンチョビはそれを、どうやら自分のせいだと感じているらしかった。
彼女らしいと思った。
しかしそれは決して事実ではない。
145: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:34:14.63 ID:MeNYOwih0
「今日、監督と会うの何時からだっけ」
「――18時だ。自分も行くなんて言うなよ?」
先手を打たれてしまった。
146: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:35:53.67 ID:MeNYOwih0
ずがーん、と脳みそに隕石が落ちる。
そういうのずるくないですか。
体が硬直し、俺に染み付いたヘタレ根性では、何も言えなくなる。
「戸庭。私は、一人で行ってくる」
147: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:37:33.28 ID:MeNYOwih0
「よおし!」
アンチョビが自らの膝を叩く。
「じゃあこうしよう、監督と会うのを延期する」
148: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:39:08.64 ID:MeNYOwih0
「また後でな」と言葉を残し、アンチョビが去る。
俺はアンチョビがいなければどうなっていたのだろう、とふいに思う。
ifの話を考えても仕方がないが、まぁ運が悪ければ、横たわるベッドは病室のそれではなかっただろう。
149: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:41:17.35 ID:MeNYOwih0
こちらから折り返し発信してやると、すぐに応答があった。
「戸庭あっ! 出社はどうしたお前! 寝坊か!」
「倒れたんで入院することになりました。しばらく会社行けそうにないです」
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