141: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/17(火) 23:20:04.38 ID:MeNYOwih0
ひゅうひゅうと微かな呼吸が寝室に薄く響いた。
何とか気力を振り絞ると指先がぴくりと動く。
とはいえ起き上がるほどの筋力はないらしく、ベッドの上でもがくのみだ。
「ううう」
覚悟を決めて体を転がす。
すると、ベッドから落ちた俺の体は床と接触して鈍い音をたてた。
やがて寝室の扉をノックする音と「戸庭?」と俺を呼ぶアンチョビの声が聞こえる。
そこで俺が再び「アンチョビさん」と声をあげると、「入るぞ」と扉の隙間からアンチョビの綺麗な髪が見えた。
「戸庭っ!」
アンチョビが叫ぶのが聞こえるが、俺にはどうにも遠い世界の出来事に思えた。
ずぶずぶと暗く寂しい世界が俺の傍にあって、俺はその境界に立っていた。
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