【モバマス】クラリス「魔女・セイラム」
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55:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:25:11.25 ID:TXxgAIfuO
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 あれから、二年という月日が過ぎました。

 セイラムの脱離は教会の運営にきわめて大きな影響を残しました。収入の大きな部分を補っていた彼女がいなくなってしまったのですから、それも当然のこと。借り入れていた金額は日増しに大きくなり、返済は当然のように滞って――教会は物件として差し押さえられ、ついには使用を禁じられました。
以下略 AAS



56:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:25:53.98 ID:TXxgAIfuO
 青空の下、花の落ちて緑だけが美しいバラ園の中、私はCDプレイヤーの停止ボタンを押し込んで微笑みます。

「ふふ、素晴らしい合唱でしたね。きっと、神様にも届いたと思いますよ。今日はこれでおしまいにいたしましょう」

 聖歌隊の子供たちは、邪気のない顔で私に別れと再会の約束を告げ、帰途に着きます。その彼らに、次の日曜日もまたこの場所でと、そう伝えなければならないのがただただ辛い。
以下略 AAS



57:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:26:40.61 ID:TXxgAIfuO
 ふと、その私の頭上に影が差しました。

「――どうして悲しげなの?」

 不意のことでしたが、質問が私に向いていることは明らかでした。表情をあらためて、私は目に入った黒革のパンプスにこたえます。
以下略 AAS



58:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:27:46.91 ID:TXxgAIfuO
 きっと、あたたかな心を持つひとなのだろうと思いました。そうしてようやく、顔も見ずに話している無礼にはたと気付きます。

 取り急ぎ、立ち上がって――目を合わせるや茫然として、自らを忘れました。

「でも、間に合ってよかった」と言うその顔は、慈しむように微笑んでいました。
以下略 AAS



59:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:28:58.71 ID:TXxgAIfuO
申し訳ございません、>>58はミスです。以下に訂正を。


60:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:29:47.58 ID:TXxgAIfuO
 他人事であるはずなのに、その声は私の内情に優しく添うようでした。

 きっと、あたたかな心を持つひとなのだろうと思いました。そうしてようやく、顔も見ずに話している無礼にはたと気付きます。

 取り急ぎ、立ち上がって――目を合わせるや茫然として、自らを忘れました。
以下略 AAS



61:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:30:20.06 ID:TXxgAIfuO
「……セイラム?」

「うん。ひさしぶり」

「……本当に?」
以下略 AAS



62:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:31:51.68 ID:TXxgAIfuO
 伸ばしてあった髪は潔いくらいにばっさりと短くなり、黒衣であることは変わりませんでしたが、修道服ではなく、本来私たちと交わるはずのないビジネススーツを着込んでいました。

 それでも変わることはない彼女の本質が、そこに立っていたのです。

「クラリス」と、彼女が初めて私の洗礼名を呼びました。たったそれだけのことで、驚きと戸惑いも抑えて、嬉しい気持ちは溢れそうなほど。ですが、続いた言葉に気を引き締めました。
以下略 AAS



63:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:33:15.26 ID:TXxgAIfuO
 それから、彼女は私に一枚の名刺を差し出しました。そこには「セイラム」ではなく、彼女の俗名が綴られています。

 肩書きは、

「シンデレラガールズ・プロダクション、アイドル部門、プロデューサー……?」
以下略 AAS



64:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:34:23.34 ID:TXxgAIfuO
「いろいろあったんだ」と彼女は言いました。

 私たちの教会を去ってから、彼女は紹介された修道会に一旦は身を寄せたそうです。しかし、そこで日を過ごすごとに、愛した場所との違いが目に入る。自分の本来の居場所がここではないと思い知る。決別は早かったそうです。

 どうにかして帰りたかった。帰れないことだけは明らかだった。だったら、せめて外からでも力になろうと思った。
以下略 AAS



65:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:35:10.01 ID:TXxgAIfuO
「昨日やっと、プロデューサーとしてひとり立ちを認められてね。したらすぐ、担当するアイドルをスカウトするのが最初の仕事だって言われて。スパルタでしょ。まあ、それは都合よかったし別にいいんだけど」

 しばらくぶりの彼女との会話に、時間を忘れるようでした。なにものにも代えがたい喜びに浸っていたところ、ふと、気になる言葉に引っかかりました。

「……都合がいい?」
以下略 AAS



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