64:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:34:23.34 ID:TXxgAIfuO
「いろいろあったんだ」と彼女は言いました。
私たちの教会を去ってから、彼女は紹介された修道会に一旦は身を寄せたそうです。しかし、そこで日を過ごすごとに、愛した場所との違いが目に入る。自分の本来の居場所がここではないと思い知る。決別は早かったそうです。
どうにかして帰りたかった。帰れないことだけは明らかだった。だったら、せめて外からでも力になろうと思った。
資金が必要だった。そのために思考を巡らせ、あらゆる可能性を調べて、ついに見つけたのは、皮肉にも彼女が居場所を去る原因となった、スナックで手に入れた伝手。
その店の常連で、彼女をいたく気に入っていたのが、ある有名な芸能事務所のお偉方だったのだと。
人当たりがよく、聡く、オルガンから音楽の造詣にも通じる彼女。採用に至るのがあっという間だったと、自慢げに言われたことも納得ができるようでした。
それから長めの研修期間を積んで、その間も愛した場所を決して忘れることはなく――そしてようやく、今日にこの地を踏んだ。
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