【艦これ】一九四八年:あるいは爆雷でいっぱいの海
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8:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:15:13.81 ID:leW1YX1c0
ナノファージウイルスの感染者が初めて確認されたのが当時のロシア東部だった。
原因も対処法も分からない脅威にたちまち国家としての機能は分断・消失し、現在では内陸から港に至る巨大な防壁で感染者ごと隔離されている。
生き残ったわずかな都市に住む人々の行動も厳しく制限されており、壁の外に出るためには何か月もかかる審査を待たなければならない。
9:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:15:57.96 ID:leW1YX1c0
「……それは、決定事項、なのかな」
感染の危険度も桁違いに高い上、未だ不安定な情勢が続く地域への単独派遣だ。一度向かえば生きて祖国の土を踏める可能性は高くないだろう。
『国境線への艦娘派兵は国際会議での決定だが、艦種及び艦の指定はされていない。私が君なら適任だろうと判断しただけだ』
10:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:16:57.73 ID:leW1YX1c0
執務室を後にしながら、響は男の言葉を思い出す。
エクスペンダブル
「発症しなくても、私たちはいつだって使い捨ての消耗品だよ」
11:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:17:28.22 ID:leW1YX1c0
"Or All the Seas with Depth Charges."
12:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:18:04.21 ID:leW1YX1c0
ドック
彼女は空襲で大破した姉を船渠まで曳航していた。
口が悪いせいで誤解されがちだが、誰よりも優しく、理不尽に立ち向かう強さを持っていた自慢の相棒。
13:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:18:48.05 ID:leW1YX1c0
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14:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:19:27.35 ID:leW1YX1c0
響は当てもなくふらふらと歩きまわっていた。
気づけば人通りのない街の外れ。『国立特別療養所』と書かれた風化した看板の前。
キャリア
保菌者の確保は数えきれないほど行ってきたが、よく考えてみればその先に何が待っているかは正確に知らない。
15:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:20:12.02 ID:leW1YX1c0
サナトリウム
療養所の中は、確かにある意味で緩やかな地獄だった。
誰もが生気なくぼんやりとそこかしこに佇み、どこか遠くの方で苦痛に呻く声が聞こえてくる。
16:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:20:56.53 ID:leW1YX1c0
「潮……なのかい?」
幾分やつれてはいるが、かつての戦友、駆逐艦・潮に間違いなかった。
「覚えてるかな? 同じ部隊にいた響だよ。あの時――」
17:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:21:38.37 ID:leW1YX1c0
「……」
「大丈夫ですよ。これはきっと、あたしが役に立つチャンスだと思うんです」
潮の目は確かに正気でありながら、続く言葉は狂気に踏み込んでいた。
18:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:22:19.03 ID:leW1YX1c0
「……私は、潮が思うほど立派じゃないよ」
震える声で潮に告げる。
「今も死ぬための仕事から逃げてここにいる。私が覚悟を決めれば、皆は生き延びられると知りながら」
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