103: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:45:34.50 ID:Y+SAhLWq0
園の敷地内に小さな売店があって、夕美さんが「アイス食べよっ」と言って私を引っ張っていった。
私は昔から好きでたまに食べている棒つきアイスを買った。夕美さんも同じものを選んだ。
ベンチに腰掛け、慎重に袋を開ける。私は開けようと力を入れた拍子に中身が吹き飛んでしまったり、ちゃんと開ききっていない袋にアイス本体がひっかかって棒だけが抜けてしまうということがよくあったから。
104: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:46:29.52 ID:Y+SAhLWq0
ひと通り園の中を眺め終えて、私たちは出口の近くにあるお土産屋さんに入った。
さまざまな種類の種や小さめの鉢植え、それに植物の図鑑、お花をモチーフにした雑貨などが売っている。
夕美さんが真剣な表情で種を選んでいた。可能なものなら全種類買っていきたいとでも思っているようだった。
私は必要なものはなかったけど、なんとなく記念に、お花柄のついたメモ帳とシャープペンを買った。
105: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:47:31.47 ID:Y+SAhLWq0
私は寮に戻り、食堂で早めの夕食をとってから事務所に向かった。
「第2レッスン室を使います」と私が言うと、プロデューサーさんは、どこかとがめるような眼差しを向けてきた。
「相手は誰だ」
106: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:48:35.91 ID:Y+SAhLWq0
レッスン室のオーディオに持ってきたCDをセットし、再生ボタンを押す。
流れ出した夕美さんの歌に、いっしょに歌っているつもりになって自分の声を重ねる。
合同レッスンで見学させてもらった動きを、見よう見まねで再現する。
見るのと自分でやるのはやっぱり大違いで、なかなかうまくはいかない。
107: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:50:26.77 ID:Y+SAhLWq0
その日の夜、久しぶりに実家に連絡をしてみた。思えば346プロに入ったとき、書類の郵送をしたとき以来だった。
電話には父が出た。また移籍だろうか、と身構えてる雰囲気が電話越しでも伝わってくる。
「今度お客さん5000人ぐらい来るライブに出るんだ」
108: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:51:19.24 ID:Y+SAhLWq0
それから、毎日の自主レッスンと、何回かの合同レッスンを重ねて日々を過ごした。
志希さんは、ときどき気まぐれに顔を出しては、自由奔放に歌とダンスを披露し、気付けばまたどこかに消えていた。
夕美さんは、「困ったものだね」と笑っていた。
休憩時間に夕美さんの前で、ひとりでこっそり練習していた夕美さんの曲をやってみた。
109: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:52:07.97 ID:Y+SAhLWq0
*
ライブ当日、私とプロデューサーさんはかなり早い時間に出立した。
きっとだいじょうぶ、なんて希望的観測をもってはいけない。なにが起きてもかまわないと思っておくくらいがいい。
あらかじめ予測し、十分な備えをした場合はなにも起こらないことが多い。今回も特に問題は起こることなく、移動に使用したバスは十分な余裕をもって会場近くの停留所に到着した。
110: ◆ikbHUwR.fw[sage]
2018/06/02(土) 10:53:02.54 ID:Y+SAhLWq0
(本日はここまでです)
111:名無しNIPPER[sage]
2018/06/02(土) 11:33:41.05 ID:tYeyQESgo
からすとか不吉すぎんよー
112:名無しNIPPER[sage]
2018/06/02(土) 12:53:31.97 ID:I/4vJzUco
カラス「ほたるちゃんが歌うと聞いて」
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