8: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:18:20.72 ID:0nbIURfu0
「なるほど。納得できない理由も沢山ありましたが、文香さんと得意分野が被ってしまうのはよくない、という理由であれば納得できます」
ありすは知識に偏りがちなので写真を撮ってSNSに投稿するのは見聞を広げるきっかけになるかもしれない、ありすのスケジュールを考えるとブログ用の文章を考える時間を確保するのは難しいのではないか。
そんな理由をいくつかでっちあげてみたものの、ありすの気持ちにはほとんどが響かなかったようで、妥協点へたどり着くまでに三回の追加オーダーを要した。
9: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:23:26.14 ID:0nbIURfu0
ありすの後姿をモノクロに加工した写真のとなりには、数週間前からわずかにだけ増えた数字が並んでいる。
スマホの中に彼女の日常と一緒に小さく収まっているそれが、彼女の、橘ありすのインタスグラムのアカウントだった。
「あの、最初から私であることを公にするんじゃなくて、最終的に私だって気付いてもらえるようにしたいんですけど」
10: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:25:38.44 ID:0nbIURfu0
「へー、なるほどね。ありすちゃんがインタスグラムかぁ」
「あたし達もやってるんだよね。ありすちゃんアカウント教えてよ」
そう言って二人が開いたアカウントには、ありすのそれとは違って数十万を超えるファンが付いていた。
11: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:27:24.06 ID:0nbIURfu0
この写真を撮影してアップするだけできっと、人気アカウントへの仲間入りなんて優にかなうと思うのだけれども、ありすはそれを良しとはしないのだろう。
「プロデューサーさん、遊んでないでこっちで一緒に考えてください」
ここで素直に僕を頼れるようになったのは、彼女の一つの成長の形だろう。
12: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:31:49.64 ID:0nbIURfu0
「つまり、お二人がどんなネイルアートをしているかですとか、どんな服をきているかですとか。そういったものが見たくてフォローしている人が沢山いる、ということでいいんですよね」
二人と別れ、次の予定に向かう車の中で、ありすはそうポツリと呟いた。
喫茶店の中でそれを口にしなかったのは、ヒントを受けるとまでそれに気づくことができなかったことに対する意地だろうか。
13: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:33:19.88 ID:0nbIURfu0
それから数日後、彼女のインタスグラムには文香と仕事で撮ったオフショットがアップされていた。
14: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:34:49.91 ID:0nbIURfu0
「良かったのか、これで?」
彼女がインタスグラムに投稿する予定の写真をチェックしながら、僕はそう彼女に問いかけた。
ああでもない、こうでもないと、彼女は写真に付ける用のタグ(最低限5つ以上、できればアルファベットのものを多めに付けるというみくの教えにかなり難儀しているようだ)を英和辞典のページを参考に考えている。
15: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:36:32.61 ID:0nbIURfu0
みくさんにとっての猫や、美嘉さんや加蓮にとってのファッション。
そして文香さんにとっての読書。
事務所のみなさんが持っているようなSNSする映えする個性は私には無いかもしれませんけど、それでも私の毎日は誰にだって負けないぐらい輝いていると思うんです。
16: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:38:19.36 ID:0nbIURfu0
終わりです。
読んでくださった方、ありがとうございました!
17:名無しNIPPER[sage]
2018/04/21(土) 23:54:53.34 ID:q1ugJAUco
乙ー
18:名無しNIPPER[sage]
2018/04/22(日) 06:00:52.41 ID:tvVigAfA0
乙
21Res/25.53 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20