橘ありす「インタスグラム、ですか?」
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15: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:36:32.61 ID:0nbIURfu0
 みくさんにとっての猫や、美嘉さんや加蓮にとってのファッション。

 そして文香さんにとっての読書。

 事務所のみなさんが持っているようなSNSする映えする個性は私には無いかもしれませんけど、それでも私の毎日は誰にだって負けないぐらい輝いていると思うんです。

「そうですよね、プロデューサーさん」

 だって、わたし、毎日が本当に楽しいんですから。

「そうだな、きっとそれでいいんだと思う

「橘ありすって女の子の最初のファンとしての意見を言うと、やっぱり僕たちは好きな女の子のことは全部知りたいって思うから

「ありす自身の事も、ありすの周りの友人たちの事も、アイドルのことも、アイドル以外のことも、全部含めて”橘ありす”って女の子だから

「アイドルである以上に、僕たちは橘ありすって女の子を追いかけてるんだから

「だから、ありすが楽しんで撮った写真なら、どこかで見たことのあるパンケーキの写真でも僕は喜んで保存したと思うよ

「僕たちには、ありすがパンケーキを食べたって小さな話でさえ宝物に写るんだから

「アイドルらしい写真も、アイドルらしくない写真も、ありすらしい写真も、ありすらしくない写真も

「ただ、ありすが楽しくやってくれることだけが、僕たちの望みだから

「アイドルでもアイドルじゃなくても、魅力的なありすの撮った写真が魅力的じゃないはずがないんだから」

 かなりしゃべり過ぎなぐらいの僕の話を、ありすはこちらの目をじっと見つめながら静かに聞いていた。

 そして、しばらく下を向いて自分の手の甲を眺めた後、こう呟いた。

「じゃあ、プロデューサーとしての意見はどうなんですか?」

「そうだな。その答えに俺が導けなかったことが悔しいと思うよ」

 今回なーんにも役に立てなかったもんな。

 一人で大人になっちゃってさ、寂しいよ僕は。

「なるほど、どうにも普段と様子が違うと思っていましたが、そういうことですか」

 そう言って顔を上げたありすは、何故か顔を真っ赤にしていた。

「一度しか言いませんから、ちゃんと聞いてください。

「プロデューサーさんが言うとおり、貴方だって私の一部なんです。

「だから、役に立てなかったなんてこと、あるはずがないのに。そもそも、プロデューサーさんがここに連れてきてくれなかったら、今の私なんてあるはずがないんです。

「ですから、あの。プロデューサーさん。ありがとう、ございます……

 なにか、とても大切な話をありすがしたような気がしたが、話を聞いているうちに、彼女の視線はだんだんと下を向いていき、それにつれていまいち言葉が聞き取れなくなっていった。

「あの、ごめん。できればもう一度……」

「いいえ、私もまだまだですね、って言ったんです」

 そして、そう尋ねた僕に、彼女はもっと顔を赤くして、舌を少し出しながらそう答えた。


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