橘ありす「インタスグラム、ですか?」
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12: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:31:49.64 ID:0nbIURfu0
「つまり、お二人がどんなネイルアートをしているかですとか、どんな服をきているかですとか。そういったものが見たくてフォローしている人が沢山いる、ということでいいんですよね」

 二人と別れ、次の予定に向かう車の中で、ありすはそうポツリと呟いた。

 喫茶店の中でそれを口にしなかったのは、ヒントを受けるとまでそれに気づくことができなかったことに対する意地だろうか。

「まあ、そういうことだな」

「ちょっと意外です。 お二人はもっと、ファンのことを意識した写真を投稿しているのだろうと思っていました」

「あの写真だって、立派にファンに向けられたものだと思うよ」

 確かに、イベントにだって来ないし、ラジオも聴いていないし、もしかしたらCDだって買わないのかもしれない。

 それでも、その人達は彼女たちのファンなのだと思う。

 ビジネス的な立場で考えてみても、将来の彼女たちの熱狂的なファンというのは彼達や彼女達の中に眠っているように思えるし、また、彼女たちの新しい魅力を見つけてくれるのはそういった人達であることも少なくない。

「なるほど。そういう考え方もあるんですね」

「それに、本当に大切なのはきっとそんなことじゃないんだ」

 みく、美嘉、加蓮。

 スマホ画面の中に写る彼女たちの笑顔も、インタスグラムの話をする彼女たちの笑顔も。

 ステージ上の笑顔とはまた別モノではあるものの、本当にキラキラと輝いている。

 まるで、歳相応の普通の女の子であるかのように。

「きっと、みんなは本当に自分が好きなことを、楽しいと思っていることをSNSでやっているんじゃないかな」

 SNSで自由にありのままの自分が好きなことを表現して、新しく輪が広がって、そして自然と結果が付いてきている。

 もちろん、少なからずは計算だってあるだろうが、本質にあるのはそれの筈だ。

 本当にありすがパンケーキの写真を投稿したいと思ったのならそれでいい。

 でも、そうじゃないのならば。

 僕にも何か、協力できることがあるのではないかと思うのだ。

「私が本当に楽しいと思っていること、ですか……」

 そう呟く彼女の表情には、何かを考えているような色が見えた。


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