8: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 23:18:20.72 ID:0nbIURfu0
「なるほど。納得できない理由も沢山ありましたが、文香さんと得意分野が被ってしまうのはよくない、という理由であれば納得できます」
ありすは知識に偏りがちなので写真を撮ってSNSに投稿するのは見聞を広げるきっかけになるかもしれない、ありすのスケジュールを考えるとブログ用の文章を考える時間を確保するのは難しいのではないか。
そんな理由をいくつかでっちあげてみたものの、ありすの気持ちにはほとんどが響かなかったようで、妥協点へたどり着くまでに三回の追加オーダーを要した。
隣で話を聞いていたみくも、最初こそ「インタスグラムの写真を理由にしてデートを考えていることをにおわせるにゃ」「ありすの写真がたくさん欲しいって言えば一発にゃ」などと後ろからぽそぽそとちょっかいをかけてきていたものの、終わりの見えない会話を前に再び目から力がどんどんと失われていき、今となっては机の引力に完敗して授業中に昼寝をする学生のような佇まいになっている。
「どうしよう、前川にインタスグラムの使い方を聞く予定だったんだけど」
「ごめんなさい、みくさんがせっかく来てくれたのに。私、ついムキになってしまって」
ほんとうにどうしよう。
こちらの予定の事はともかく、彼女にもこれからの予定があるはずだ。
仕事が入っているということはない筈だけど、よりにもよってマストレさんとのレッスンでも入っていればとんでもないことになるのは想像に難くない。
ふにゃふにゃになってしまったみくの前でわたわたしているありすを眺めながら困っていると、彼女は突然ステージの上での軽やかさも、普段の猫らしさも丸で感じさせないふらふらとした仕草で「あまい、あまいのにゃ」と呟きながら上体をおこしてこう言った。
「Pちゃん、ありすちゃん。 みくはね、二人とも大事な友人だと思っているから、出来るだけ力になりたいと思っているの」
「でもね、ちょっと今日は辛いから、できれば日を改めてくれると嬉しいかな」
僕たちは、無言でうなづくしかなかった。
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