54: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 20:56:55.52 ID:NMaauvKO0
「みずき姉さま。お心遣い、痛み入ります。みずき姉さまの真剣に怒って下さるところ、わっちは好きです。川島さまも、姉さまのそんな情の深いところに惚れておられるのでしょうね。」
駄目な人が好きなんですねぇ、お互い。
などと言って、クスクス笑う。
55: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 20:59:40.46 ID:NMaauvKO0
「あん人は、優しいお人ですから。きっとたんまりの幸せをくれる嫁御が出来ます。わっちなんかにかかずらわせて、要らぬ不幸を背負わせるわけには参りません」
それは鯉風太夫ではなく、楓というひとりの少女の言葉なのだろう。
56: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:01:26.96 ID:NMaauvKO0
「みずき姉さまのお心遣い、痛み入るほどにありがたい事ですけれども。わっちは姉さまが見込んでくださるほど、大した女子ではありんせん。
好いた男に名前を呼んでもろうたら、それで満足出来る女子でござんす。」
太夫は、安らかな面持ちで目を閉じながら、静かに首を振る。
57: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:02:55.46 ID:NMaauvKO0
「泣いておらん」
「泣いております」
「わっちの涙ではありんせん。アンタがちっとも泣かんから、わっちが代わりに泣くの。」
58: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:03:57.35 ID:NMaauvKO0
◇◇◇◇
「牙突・零式って」
59: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:05:13.28 ID:NMaauvKO0
「そういえば、こんなの作ってきたんですよ。お酒が美味しすぎて忘れてました。」
「ダメ人間ですねえ、はっはっは」
「お揃いですねえ、うふふ」
「どういう意味ですかな、はっはっは」
60: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:05:55.11 ID:NMaauvKO0
「……楓さんにこんな一面があったとは。」
「どういう意味ですか?」
「のんべえオブのんべえだと思ってましたからね。てっきり自分で作れるのはおつまみくらいなもんだと」
61: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:07:36.11 ID:NMaauvKO0
「――さあ、復唱してください。楓さんは家庭的な料理も作れる素敵な女性です、嫁にしたい大好きです結婚しよう、はい」
「くっ……殺せ……!!」
楓さんの左目と同じ色をした魔性の四合瓶の輝きが、僕の中の劣情をちりちりと煽り立てる。
62: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:09:17.56 ID:NMaauvKO0
「……くふっ、ふ、ふっ……あははっ……っ!!」
悪魔のドリンクバーを敢行していた楓さんが、やがてころころと笑い出した。
どうしましたか、ようやく酔いましたか。
63: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:10:06.92 ID:NMaauvKO0
――――いっそ、和歌山にこのまま引きこもっちゃいますか。
アイドルも辞めて。プロデューサーも辞めて。ただのふたりで、いっしょに。
「幸い、お金はおっかねえくらいありますし。」
64: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:10:42.57 ID:NMaauvKO0
「なんというか……楓さんには、下を向いてほしくないですから。貴方は、笑ってる顔が一番いいんで」
少し面映ゆくて頬を掻きながら、なんとか、安心させたくて、思いつくことを言った気がする。
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