56: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:01:26.96 ID:NMaauvKO0
「みずき姉さまのお心遣い、痛み入るほどにありがたい事ですけれども。わっちは姉さまが見込んでくださるほど、大した女子ではありんせん。
好いた男に名前を呼んでもろうたら、それで満足出来る女子でござんす。」
太夫は、安らかな面持ちで目を閉じながら、静かに首を振る。
そして笑って、そう言う。
「わっちの幸せは、決まっとります。好いたお人が幸せになってくらはったら、それで何もいらんえ。」
澄んだ左目が語った。翡翠色を溶かしたような、綺麗な碧色。
――――あの方は、約束ば守ってくださいんしたから。
わっちをもう一度、見付けてくださった。わっちをもう一度、楓と呼んでくださった。
この上ない、果報でござんした。
それだけで、十分でありんす。わっちの夢は、叶ったのですから。その夢だけで、わっちは生きていたいと思えたのですから。
それだけで、きっとわっちは、生きていこうと思えますから。
「――――泣いてはるの、みずき姉さま」
大粒の涙を拭いながら、天神は首を振った。
163Res/145.27 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20