15:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:15:15.72 ID:ti9kriyWo
CDには、千早さんのソロライブのチケットの抽選券が入っていました。
せっかくなので申し込んでみると、
あとから聞けばとても幸運なことだったらしいのですが、当選することができました。
開催日は、卒業間近の時期でした。
その頃には受験も終わっているので、心置きなく参加することができます。
16:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:18:02.41 ID:ti9kriyWo
けれど、もしかしたらCDを何度か聴くうちに慣れていたのかも知れません。
私はその時初めて、根本の部分はあの頃と変わっていないことに気がつきました。
とても綺麗で、透き通るような、でも強い芯を感じさせる歌声。
歌のことを本当に大切に思っている、そこは何も変わっていないんだと、そう思いました。
17:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:19:47.24 ID:ti9kriyWo
「今から、一年弱ほど前……とある合唱で、私はこの歌を聞きました。
ですが、歌ってくれた人たちに感想を求められた私は、酷評してしまったんです。
技術が足りていないから、もっと努力するべきだ、って。
けれど今になって思えば……私は、確かに惹かれていたんです。
そうでなければ、私は彼女たちの元へ足を運ぼうなどとは思わなかったはずです。
18:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:21:48.01 ID:ti9kriyWo
千早さんは歌い始めました。
とても優しく、綺麗で、楽しそうな声で。
表情もきっと、笑顔で歌っていたのだと思います。
あくまで想像につきませんが。
私は、歌っている千早さんの顔を見ていません。
19:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:29:39.28 ID:ti9kriyWo
次の月曜日、私は音楽室に行きました。
既に合唱部のみんなが揃っていました。
私と同じく引退した三年生も含めて。
あの子、本当に来るの?
20:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:33:00.99 ID:ti9kriyWo
「あの……もしかして、今日は何か、ご予定が……?」
引退した三年生が居るからには、何か特別な予定があるのかもしれない。
今日自分がここに来たのはタイミングが悪かったか。
千早さんはそんな風に考えたように見えました。
21:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:37:13.66 ID:ti9kriyWo
ううん、いいの。私達も、無視とかして、ごめんね。
初めにそう言ったのは私でした。
それに続いてみんなも、同じように謝りました。
「ありがとう、ございます……」
22:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:38:50.63 ID:ti9kriyWo
その言葉に私たちは顔を見合わせました。
でも断る理由はありません。
うん、いいよ、どうしたの?
そう問い直すと、千早さんは一瞬だけ目を泳がせたあと、真っ直ぐに私たちを見つめ直して、
23:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:41:08.46 ID:ti9kriyWo
すぐ隣から聞こえる千早さんの歌は、やっぱり、とても綺麗で、上手でした。
優しくて、楽しそうで。
きっとみんなも私と同じ感想を抱いていたのだと思います。
その時の合唱は、多分私たちの学校生活の中で一番……
24:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:41:40.73 ID:ti9kriyWo
これで終わりです。
付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ様でした。
25:名無しNIPPER[sage]
2018/04/07(土) 23:21:52.42 ID:EUXSewHfO
合唱部視点のSSって初めて読んだけど凄く好きです
乙でした
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