18:名無しNIPPER[saga]
2018/04/07(土) 22:21:48.01 ID:ti9kriyWo
千早さんは歌い始めました。
とても優しく、綺麗で、楽しそうな声で。
表情もきっと、笑顔で歌っていたのだと思います。
あくまで想像につきませんが。
私は、歌っている千早さんの顔を見ていません。
私はずっと、タオルで顔を覆っていました。
両目から溢れる涙を止めることができませんでした。
無駄じゃなかったんだ。
新入生に楽しさが伝わるように。
そうやって曲選びに悩んだことも、練習したことも、無駄じゃなかったんだ。
私たちの合唱は、千早さんの心にずっと残り続けていたんだ。
嬉しくて、嬉しくて、涙が止まりませんでした。
千早さんの歌を聴きながら、私はずっと泣き続けました。
声だけは、必死に抑えて。
自分の泣き声で千早さんの歌が聞こえなくなるなんてことは、あってはなりませんから。
結局最後まで、私は顔を伏せたままでした。
けれど分厚いタオルに覆われた瞼の裏には、千早さんの笑顔が映り続けていました。
歌声と同じ、優しく、綺麗で、楽しそうな笑顔が、ありありと浮かんできました。
ただそこには一つだけ、私の願望も一緒に映し出されていました。
瞼の裏で歌う千早さんが居た場所は、ライブのステージではありませんでした。
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