4:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:29:39.22 ID:ZHvlmj8j0
彼女が部屋から出たのを確認してから、PCの画面へ目を移す。さて、まだ一ページ目の企画書をどうしたものか。
気合をいれるために飛鳥から受け取ったスタドリを一気に飲み干す。体内に栄養がめぐり、頭が冴えてきた。時刻は午後九時を回ったところだ。朝までには片付けよう。
担当アイドルである飛鳥の顔を思い浮かべながら、仕事を再開した。
5:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:30:16.48 ID:ZHvlmj8j0
2. 二宮飛鳥「ある日の朝」
ピピピ、ピピピ。カチッ。
朝だ。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。朝はいつもこうだ。どれだけ長く夢を見ようと、朝は等しく眠い。……だからと言って、お気に入りのラジオを遅くまで聴いて良いわけではないが。
掛け布団と枕の隙間から時計を確認すると、七時を少し越え、長針が二の数字へ差し掛かろうとしていた。今日は少し遠いところでロケがある。八時半過ぎに合流する予定だから、あと五分だけ……。
6:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:31:03.35 ID:ZHvlmj8j0
「起きろー。昨日あのラジオ聴いてただろ。二時まで起きてるから起きられないんだぞ」
「ん、んぅ……。キミも、昨晩は聴いてたのかい?」
「仕事ついでに、な。ほら、シャワーで目を覚ましてこい」
7:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:31:51.58 ID:ZHvlmj8j0
「改めておはよう、飛鳥」
「おはよう、プロデューサー」
小さなテーブルを囲んで朝食をとる。夕食であれば何度も一緒にしたが、朝は初めてだ。
8:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:32:37.34 ID:ZHvlmj8j0
食事を終えると、時刻は八時半を越えようとしていた。急いで支度をし、いつもの社用車の助手席に座る。後部座席は広くて、のびのびできるから嫌いではない。
でもボクは、キミを近くに感じられる助手席の方が好きだ。
「シートベルトしたか?」
9:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:33:54.39 ID:ZHvlmj8j0
二宮飛鳥「キミに贈るもの」
二月十四日、女性が意中の男性や、仲の良い男性にチョコレートを贈る、いわゆるバレンタインというやつだ。お菓子会社の策略に踊らされるなんて、全く、これだから大衆というヤツは……。
「まぁ、そんなことを言いつつも、今回はボクもその大衆の一人なんだけど、ね」
10:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:34:30.97 ID:ZHvlmj8j0
「飛鳥ちゃん、これあげます!」
ちひろさんはそう言いながら、ボクに本を差し出した。本を受け取り、タイトルを確認する。
「手作りチョコの、作り方……?」
11:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:35:32.30 ID:ZHvlmj8j0
それから材料や包装用紙を買ってきて、今日に至る。時計を確認すると、冷蔵庫にチョコをいれてから一時間半ほど経過していた。
「そろそろかな」
立ち上がり、冷蔵庫から型を取り出す。逆さにして軽く叩くと、小さなハートの形をしたチョコレートがいくつか落ちてきた。何と言うか、直球すぎるなこれは……。
12:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:36:41.50 ID:ZHvlmj8j0
翌日、ボクはいつものように屋上にいた。
フェンスから外を見ると、いつもの見慣れたコンクリートジャングルに、綺麗な夕日が映っている。何度か見たことのある景色だ。ただ、いつもと違うのは、右手に小さな箱を持っていることだった。
焦げ茶色をした包装用紙に、赤と黄色のリボンが結ばれている。交差部分の結び目には、羽根のアクセサリーが付いていた。
結局お菓子会社の策略に、ちひろさんの策略に踊らされてしまったが、意外と楽しいものだということに気付けた。その点は感謝して良いかもしれないな……。
13:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:37:17.19 ID:ZHvlmj8j0
「すまん、待たせた。用事ってなんだ?」
いつもの調子と変わらない、聞き慣れた声が後ろから聞こえた。
「謝る必要はないさ、急に呼び出したこちらが悪い。さて、今日はなんの日か、知っているかい?」
14Res/12.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20