10:名無しNIPPER[sage]
2018/02/14(水) 23:34:30.97 ID:ZHvlmj8j0
「飛鳥ちゃん、これあげます!」
ちひろさんはそう言いながら、ボクに本を差し出した。本を受け取り、タイトルを確認する。
「手作りチョコの、作り方……?」
「プロデューサーさん、絶対に喜ぶと思いますよ」
生憎だけどボクはそんなキャラじゃない。そもそも、渡したいものがあったら渡すし、会いたくなったら会う。プロデューサーとはお互いそうしてきたし、これからもそうすれば良い。
バレンタインだから、なんて理由でチョコを、ましてや手作りだなんて……。
「……気が向いたら作ってみるよ」
「ふふっ、絶対作ってあげてくださいね。では私は仕事があるので」
「あ、あぁ。お疲れ様」
と答えると、ちひろさんは部屋から出ていってしまった。残されたのはボクと、右手の本だけ。
まぁ、せっかく貰ったものだ。今度暇になった時に読んでみよう。
そんなことがあったせいだろうか、その日からバレンタインのことが頭から離れなくなってしまった。
学校に行けば周りの女子が、外に出れば駅やコンビニの広告が、事務所では他のアイドルが、至るところでバレンタインがこびりついていた。今までこんなに気になったことなんて無かったのに。
ちひろさんから本を受け取ってからというもの、ボクの意識は予想以上にバレンタインへと染まっていた。
しかし、プロデューサーはいつもと変わらないままだった。事務所で雑談する時、スタジオで仕事をしてる時、送り迎えの車の中、どれを取ってもいつも通りの、普通のプロデューサーだ。
ボクの意識には常にバレンタインが居座っているのに、どうしてキミはいつも通りなんだ……。
何度か話をしてみようと思ったことはあったが、喉から先へ言葉は出ていかなかった。
はっきりとしない日々が続き、ボクは一つの答えに辿り着いた。ここまで意識し、悩んでしまうのであれば、いっそのこと作ってしまえばいい。そうすれば楽になるだろう、と。
14Res/12.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20