1: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 19:57:15.64 ID:4m3755de0
・アイドルマスターミリオンライブ、北沢志保と横山奈緒がメインのSSです。
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2: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 19:58:53.17 ID:4m3755de0
休日のとあるショッピングモールの一角、買い物に訪れた人々の喧騒を潜り抜け、ようやく逃げ込んだカフェで、奈緒さんはそんなことを言った。
店内の雰囲気は程よく落ち着いていて、それでいて人の活気もあって、でも目の前にいる相手の言葉を聞き逃すほどの騒がしさじゃない。
つまり私はその言葉を聞き逃してしまったわけじゃなく、不意に発せられたそれがあまりにも自然すぎて、その意味を解するよりも先にうっかり手元の抹茶ラテへと溶かしてしまったのだった。
少し気を落ち着けるために、仄かに香る緑を一口含む。それでもやっぱり奈緒さんが何を言いたかったのかは分からなかった。
3: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 19:59:21.46 ID:4m3755de0
ちゃんと説明されてもなお、その言葉の意味は解らなかった。
今のがちゃんとした説明だったとは到底思えないし思いたくもないけど、何にしても感覚的に話しがちな奈緒さんにそこまで求めるのも酷だろうから、これ以上の追求は諦めることにする。
……恋?
誰が、誰に?
今の話を真っすぐに受け取れば奈緒さんと私が恋仲だということになる……のかな?
4: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 19:59:52.15 ID:4m3755de0
「『はぁ?』は酷いなぁ。恋する乙女になんてこと言うねん」
乙女なんて柄でもないでしょうに、なんて声を挟む余裕はなかった。
未だ思考のまとまらない私をよそに、奈緒さんは続ける。
5: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 20:00:26.24 ID:4m3755de0
ふと奈緒さんの方に視線を向けると、熱心だったクロワッサンはいつの間にかすっかり食べ終えた――と言っても、皿にはまだ二、三個残っている――ようで、目が合った。
突然の言葉に戸惑っている私を面白がるような、そんな見え透いた色が頭上に浮かんでいる。
腹立つなぁ。
そんな様子を見てしまうと、そもそも事の発端は奈緒さんにあるわけで、どうして私が頭を悩ませているのかという気持ちになってくる。馬鹿馬鹿しい。
だから、私は思い切って直接訊くことにした。
6: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 20:01:02.44 ID:4m3755de0
「さっきからそう言うてるやん」
私がようやく声にした言葉を、奈緒さんは僅か数秒も経たないうちに肯定する。
「私、横山奈緒は北沢志保のことが好きです。これでええか?」
7: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 20:01:41.60 ID:4m3755de0
やり場を失くした声を抹茶ラテと一緒に飲み込む。直後、甘ったるい刺激が口の中いっぱいに広がり、私の感覚を覆い尽くす。それはその緑だけのせいじゃないような気がした。
「まぁ、志保にその気がないんは分かってたよ」
と、不意に奈緒さんが呟く。
8: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 20:02:12.12 ID:4m3755de0
思えば奈緒さんは初めから私に良くしてくれていた。
いや、その対象は必ずしも私だけじゃなかったのだろうけど、『一人で』ということに拘っていたあの頃の私に、仲間の大切さを教えてくれた人物の一人であることに違いはない。
苦手なダンスを教わったことだって数えきれないほどあるし、逆に上手い演技の仕方を教えたことだって何度もあった。
奈緒さんを頼ったことも、頼られたこともたくさんあって、そして、いつの頃からかこうして一緒に出掛けるような仲になって、それだってもう何度目か分からない。
そんな奈緒さんは私にとってどんな存在なのだろうか。
9: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 20:02:52.30 ID:4m3755de0
「そっか」
どこか満足したような表情を浮かべて奈緒さんは続ける。
「そう言うてもらえるってことは、少なくとも『頼れるお姉さん』止まりではなかったってことやな」
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