6: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 20:01:02.44 ID:4m3755de0
「さっきからそう言うてるやん」
私がようやく声にした言葉を、奈緒さんは僅か数秒も経たないうちに肯定する。
「私、横山奈緒は北沢志保のことが好きです。これでええか?」
しかもわざわざ明確化してきた。
それは確かに私が望んだことではあったけど、でも、出来ることならそこは曖昧のままにしておきたかった。
そう言われてしまうと、もう、後には引けないじゃないか。
そして、その言葉を受けてようやく私は、今の自分が置かれた状況を冷静に捉えることができた。
まったく、遅すぎる。
こんなの少女漫画でよくある展開だろうに、いざ自分がその場に置かれるとこんなに混乱するものなのかと驚くと同時に、作中のキャラクターたちのメンタルの強さに感服せずにはいられなかった。
そう、これはありきたりな展開で、見飽きたシチュエーションで、ありふれた一瞬で。
だから、つまり――
「告白?」
「遅いわ」
言葉の真意をいまさら掴んだ私を奈緒さんは軽く受け流す。
次の瞬間には頬杖をつきながら残りのクロワッサンへと手を伸ばしていた。
しかし、事もなげに行われているそれを真似できるほど自分が強くはないことを、私は知っていた。
「え、いや、ちょっと待ってください」
焦っている。鼓動が激しくなっていくのが感じられる。
曖昧のままだったおかげで留まっていたそれが、一気に全身を駆け巡って、意識を白く削り取っていく。
「でも、私たちは――」
言おうとして私は留まる。
奈緒さんがどこまで本気なのか分からないけど、でも、それを口にすれば相手を傷つけてしまうかもしれないことくらい、高々十四歳の私だって理解していた。
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