2: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2018/02/10(土) 19:58:53.17 ID:4m3755de0
休日のとあるショッピングモールの一角、買い物に訪れた人々の喧騒を潜り抜け、ようやく逃げ込んだカフェで、奈緒さんはそんなことを言った。
店内の雰囲気は程よく落ち着いていて、それでいて人の活気もあって、でも目の前にいる相手の言葉を聞き逃すほどの騒がしさじゃない。
つまり私はその言葉を聞き逃してしまったわけじゃなく、不意に発せられたそれがあまりにも自然すぎて、その意味を解するよりも先にうっかり手元の抹茶ラテへと溶かしてしまったのだった。
少し気を落ち着けるために、仄かに香る緑を一口含む。それでもやっぱり奈緒さんが何を言いたかったのかは分からなかった。
「すみません。よく聞こえなかったのでもう一度言ってもらっていいですか」
「いや、だから、これって恋なんかなって」
とても残念なことに、私の気持ちは全く伝わっていなかった。
本当に残念だ。もっと頭を使って会話してほしい。
「『いや、だから』じゃないですよ。何がどうなってその結論に至ったんですか」
私の言葉を聞いた奈緒さんは、何だ、そういうことかと言わんばかりの表情を浮かべる。
しかし、それも一瞬のことで、今度は大仰な身振り手振りで説明し始めた。
「私と志保ってもう長い付き合いやん」
「そうですね」
「こうやって出掛けるのも随分と慣れたもんやし、実際、私、志保とは結構仲良いと思うんよ」
「まぁ、そうですね」
「それに志保と一緒におると、楽しい気持ちになれるっていうか、ずーっと一緒にいたいなぁって思うねん」
「はぁ」
「これって恋なんかな?」
「はぁ?」
21Res/18.09 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20