246:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:40:47.37 ID:ZdvxIxQI0
「……まあ、先輩。奈雨ちゃんのことをよろしくお願いしますね」
と俺から間合いを取り、向けられていた視線の方へ歩いていく。
そこで二、三やり取りを交わした後、零華は「がんばれー」と俺に口パクで伝え、改札へとつま先の向きを変える。
247:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:41:54.07 ID:ZdvxIxQI0
【シンプル】
駅を出て地上に上がると、しとしとと降り始めらしい雨が降っていた。
十五分とも経たぬ間に、外気はぐっと冷えてしまったらしい。やけに肌寒い。
248:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:42:25.87 ID:ZdvxIxQI0
乗っているときは眠たそうにしていたけれど、今はそうでもないらしい。
何かを言いたげに俺を見ては、こうじゃない、とでもいうように俯く。
「どうかしたか?」と訊ねると、奈雨は少し間をとってから、覚悟を決めたように口を開いた。
249:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:43:02.88 ID:ZdvxIxQI0
「お兄ちゃんにそう言ってもらえるの、他の誰に言われるよりも嬉しい」
「そっか」
250:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:43:30.25 ID:ZdvxIxQI0
「あのときね、ほんとはものすごく緊張してて、駄目だって思いながらお兄ちゃんのことを探しちゃって、
それで、たまたま目をとめたところにお兄ちゃんがいて、やばいはやく集中しないとって切り替えられたの」
「隣に零華と伯母さんが座ってたの気付いてた?」
251:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:44:25.76 ID:ZdvxIxQI0
それから少しの沈黙が流れる。
奈雨はまたしても何か考え事をしているようで、視線を足下に落としていた。
俺は黙って奈雨が話し始めるのを待った。
252:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:45:14.26 ID:ZdvxIxQI0
「……いや、かわいいなー愛してるぜーって」
と、一見なんでもないような返答に、
253:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:46:10.74 ID:ZdvxIxQI0
ついこの間、同じようなことを訊かれて戸惑った気がした。
その時はたしか、"好き"の種類についての話だったと思うけど。
そういえば、"好き"と"愛してる"ってどう違うんだろうか。
254:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:46:50.55 ID:ZdvxIxQI0
……ああ、いやでも零華は"一回一回が本気"みたいなことを言っていた。
そうしないと伝わらないかもしれない、とも。……って、いまそんなことはあまり関係ない。
お花畑って的を射すぎているな、と苦笑いすらも出ないほどに納得してしまう。
255:名無しNIPPER[saga]
2018/08/09(木) 15:47:30.98 ID:ZdvxIxQI0
俺は何と言えばいいのだろう。
ため息が出そうになる。のを抑える。
その様子を見たのか見てないのか、奈雨はわざとらしくため息をついて、
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