88:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:46:33.43 ID:QxgIwWOp0
しばらく進行すると、いかにも内気そうなアイドルの子が、
あまりの緊張ゆえにステージ上で震えながら、涙を流してしまうというハプニングが起こりました。
「○○ちゃん、大変そう、頑張って」
89:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:47:06.96 ID:QxgIwWOp0
私達に、あの子の苦悩がわかるでしょうか。
あの子が泣いているから、失敗しているから、私たちも失敗して大丈夫だと、笑っている。
90:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:49:20.92 ID:QxgIwWOp0
施設内を放浪し、ステージ会場から遠く離れた果ての場所に、
誰にも使われていなさそうなベンチを見つけ、私はそこで時間が経つのを待ちました。
ライブ当日に離れのようなこの場所に来る人は、私くらいで、人の目はありませんが、
91:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:50:28.23 ID:QxgIwWOp0
それから色々考えて、やはりライブに出ることは不可能だと判断したので、
私は、ライブの時間になっても、ここでじっとしていよう、と決意しました。
隠れはせず、それこそベンチにじっと座っているだけですが、
92:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:51:39.12 ID:QxgIwWOp0
プロデューサーさんがやってきたのは、それから十七分後。私のライブ開始時刻の三十分前でした。
「森久保、こんなところにいたのか探したぞ」
93:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:53:45.42 ID:QxgIwWOp0
席を立ち、ライブ会場へと歩き始めました。
一歩進むことに、ピアスが、身体が、重さを増していきます。
私はプロデューサーさんにばれないように、身体を引きずり歩きました。
94:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:55:39.89 ID:QxgIwWOp0
再び揺れ始めた選択の中で、私は頭を抱え、その迷いを森久保は隠し、
プロデューサーさんとライブ前の最終確認をしていると、
出番一つ前の子のライブが始まり、あっという間に、終わりました。
95:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:57:40.56 ID:QxgIwWOp0
「人の視線が怖いんです。常に見られている気がして、常に試されている気がして、笑われている気がするんです。
ステージに立ったらみんな、私の歌や踊りを見て、くすくすと笑い始めるに違いありません」
浅はかな私は直前になって、自分の病気がいかに深刻かを告げ、この場を逃げようとしたのです。
96:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 23:59:14.05 ID:QxgIwWOp0
「緊張しやすい子だと思ってはいたが、森久保がそこまで人の視線に怯えているとは知らなかった。
今まで気づかずに傷つけていたこともあると思う。許してほしい。それで、誤解せずに聞いてほしいんだが」
プロデューサーさんは言葉に詰まりました。迷っているようでした。
97:名無しNIPPER[saga]
2018/01/24(水) 00:01:13.65 ID:GJMDUn0X0
そこは嘘でも、「誰も見ていない。気にするな」と言わなければならない場面で、
この人は真逆なことを言いました。
私は、その言葉が私の心に深い傷を与えるのではと身構えたのですが、
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