35:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:05:12.89 ID:QxgIwWOp0
「乃々、これを持っていきなさい」
母は笑って、私の頭を撫でると、エプロンのポケットの中からラッピングされた袋を取り出し、私に渡しました。丁寧に包装を解いてみると、そこにはシンプルな水色のピアスが入っていました。
36:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:08:01.48 ID:QxgIwWOp0
私とプロデューサーさんは二人並んで、駅へと歩き始めました。
夏休みだからか人通りが多く、たくさんの人とすれ違いました。
すれ違う人々は私自身ではなく、私とプロデューサーさん、
37:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:09:41.09 ID:QxgIwWOp0
母から貰ったピアス。
私自身へと向けられる視線を少し吸収してくれるピアス。
窓ガラスに映る自分の姿を見てみると、
38:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:27:43.63 ID:QxgIwWOp0
東京という街は人の多い街でした。
ホームに降りてから見渡す限りの、ひと。ひと。ひと。
私はこんな街でこれから過ごしていけるのかと、すぐさまアイドルになったことを後悔しました。
39:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:30:57.24 ID:QxgIwWOp0
「じゃあまた明日、事務所でな」
タクシーが寮へと着くと、
プロデューサーさんは私の荷物をトランクから玄関まで軽々と運び、事務所の方へと歩いて行きました。
40:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:32:02.07 ID:QxgIwWOp0
整理をしながら、それでも私は、
東京の街に来たことを、一人で寮暮らしを始めたことを、まだ楽しみに感じていました。
母の目もなければ、クラスメイトの目もありません。
41:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:34:01.13 ID:QxgIwWOp0
また、東京で私を知っている人なんて、それこそプロデューサーさんくらいでした。
ですから、仕事の予定が入っている日以外は、部屋に引きこもり、漫画や本を読んで暮らしていよう。
そう決心し、整理を終えると、私は早速ベッドの上で漫画を読み始めました。
42:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:35:17.67 ID:QxgIwWOp0
次の日からアイドルとしての本格的な生活が始まりました。
私は、レッスンやプロデューサーさんとの会議の十分前には、
レッスン室の前や会議室の前に設けられたソファに座るよう心掛けていたのですが、
43:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:36:18.60 ID:QxgIwWOp0
肝心のレッスンは、幸いにも私の担当となったトレーナーさんが裏表もなく、
天使のように優しい人だったので、気が楽でした。
トレーナーさんが難しいステップを踏んで、それを見た森久保が、
44:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:38:06.20 ID:QxgIwWOp0
しかしそれは、個人として見た場合のみでした。
月に何回か合同練習といって、他のアイドルたちと一緒に練習をする機会があったのですが、
隣で踊るアイドルとの距離感、タイミングというものが
45:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:40:12.02 ID:QxgIwWOp0
「色々考えた結果、グループデビューではなく、ソロでデビューさせることにしたぞ!森久保ォ!」
会議室でプロデューサーさんは私にそう告げました。
出会った頃は乃々ちゃん呼びだったプロデューサーさんも、
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