森久保乃々「さよなら、森久保」
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3:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:31:24.29 ID:QxgIwWOp0
 
 中学一年の夏でした。
 移動教室から戻るときに、私はスカートの裾がほつれていることに気づきました。
 すぐに近くの女子トイレに入り、ポーチから小さなハサミを取り出して、糸を切りました。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:35:37.36 ID:QxgIwWOp0
 
 嵐が静まったのを確認してから、私は、私の心が震えていることに気づきました。

 身体は熱く、息が苦しい。
 何度も深呼吸を繰り返し、鍵に手をかけるのですが、なかなか扉を開けられない。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:38:28.12 ID:QxgIwWOp0

 始業のチャイムがなり、先生が現れました。現代文の授業でした。
 先生はチョークをこんこんと鳴らしながら、黒板に教科書の文章を書いていきました。
 
 私は黒板のその文字をノートに書き写していきます。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:41:26.09 ID:QxgIwWOp0
 
 振り返って、彼女たちの顔を確かめたい。そんな衝動に駆られました。
 しかし私の理性と恐怖が、金縛りのように身体を締め付け、私はまさに蛇に睨まれた蛙のようになっていました。

 ここで振り向いたら、それこそ私は、変な人だと笑われてしまう。本当に笑われていたらどうしよう。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:45:00.22 ID:QxgIwWOp0

 目を覚ますと、白の天井。周りはカーテンに覆われていました。私は保健室に運ばれたようでした。
 恐る恐るカーテンを引き、ベッドから出ると、先生と母が私に気づいて駆け寄ってきました。
 
 熱を測り、風邪の症状チェックのようなものもされましたが、
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:48:07.15 ID:QxgIwWOp0

 その日から私は「いい子」ではなくなってしまいました。
 正確には、いい子でありたいと願っていたのですが、いい子であることを保つことが出来なくなりました。
 
 私は常に、人の視線に怯えるようになりました。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:50:20.66 ID:QxgIwWOp0

『常に人に見られていると思って行動しなさい』

 放課後の帰り道、一人、歩いていると、誰かが後ろからつけてきている。振り返ると、誰もいません。

以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:51:41.06 ID:QxgIwWOp0

 私はどんどんひねくれた子供になっていきました。
 それはクラスメイトの三人の心が伝染したのか、人間としての本質的な黒さだったのかはわかりません。
 
 私は人と目を合わせることが出来なくなり、人の発言や行動の奥を疑うようになりました。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:52:15.05 ID:QxgIwWOp0

 しかしながら皮肉なことに、このひねくれた性格こそが、
 私の、人に対する不安や恐怖への対抗策になることが後々にわかりました。


12:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:54:41.52 ID:QxgIwWOp0

 中学一年の冬でした。空には鈍色が広がっていました。体育の授業でした。
 体育館は他のクラスが使っているということで、私たちのクラスはマラソンになりました。

 冷たい風が肌に突き刺さるこの時期に、殺風景なグラウンドを走りたいと思うのはよっぽどの少数派で、
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:58:30.00 ID:QxgIwWOp0
「今言ったの森久保さん?」

 声をかけられ、しまった、と振り返ると、
 クラスメイトの一人が驚いたように、私を見ていました。
 私が吐きだした言葉はどうやら思っていたよりも大きかったようでした。
以下略 AAS



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