11:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:17:12.30 ID:3iKMEwHU0
二人でしばし、コーナーが終わるまでぼうっと眺めた。
出来上がったお皿が焼き上がるのは来週らしい。きっと素敵なものに仕上がっているだろう。
「癒されるなぁ。エミリーはめっちゃ変わったけどなにも変わっとらんわ」
12:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:17:38.75 ID:3iKMEwHU0
奈緒さんはポツポツと指折りしながら、誰々はやめて、誰々はこんな仕事、と繰り返す。
思っていたよりもこの手の仕事をやめてしまった人もいた。
10年経っているのだから、当たり前かもしれない。
指折り数えていた奈緒さんは、むむっと眉を寄せる。突然、両手をあわせてぱちんと鳴らした。
13:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:18:20.85 ID:3iKMEwHU0
「うわはは、衣装、赤っ! めっちゃアイドルしとるやん!」
私達のはじめての単独ライブ――『HAPPY PERFORM@NCE』だ。
場所は中野サンプラザ。今はもうない。
偶々通りかかった時に建設中のフェンスがあって、改装でもしてるのかな、と思っていたら、気づいたときには全然違う建物になっていたのだ。
14:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:19:16.75 ID:3iKMEwHU0
「奈緒さんこそ、ふとももをあんなに露わにして……」
「やばいよなぁ。今やったら大根が2本生えてるからつまみ出されるで」
「……30越えると痩せるのも大変だと聞きますけど。そろそろ対策しておいた方がいいのでは」
「ま、まだ大丈夫、あと2年あるから!
っていうか私の話はええからテレビの方を……うわー、やめてぇ! 横山奈緒をアップにせんといてぇ!」
15:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:20:18.56 ID:3iKMEwHU0
それからも節々で盛り上がったり、悲鳴をあげたり、賑やかな時間が続く。
何度目かのMCが入り、落ち着いた。奈緒さんが渇いた笑いを漏らす。
「いやぁ、それにしても、凄まじいな……自分でみよう言い出したけども、ここまでとは思わんかったで」
「同感です。稽古より疲れましたよ……」
16:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:20:47.71 ID:3iKMEwHU0
ディスクを入れ替え、MCが続く。話題にあがった静香のサプライズ登場が始まっていた。
過労で出演が見送られると発表されたのだけど、這ってでも出るって聞かなかったもんな。
……静香とは色々と衝突してやりあったなぁ、なんて思い出す。
今でなら、お互い子どもだったんだろうな、なんて総括出来ちゃうけれど、そんな答えが通じるような年齢でも気性でもないし。
17:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:21:13.78 ID:3iKMEwHU0
「――いいえ、今まで一度も。奈緒さんがはじめてです」
携帯の番号やメールアドレス、住む家もすべて変えた。
765プロの誰かと会うのは、本当に久し振りのことだった。
18:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:21:52.76 ID:3iKMEwHU0
「カッとなってすまんな。少なくともこっち側はしとらん。プロデューサーさんもビリケンさんに誓ってたし」
「……それなら、こっちの事務所の方針かもしれませんね」
ありえる。私はそういうのに、一切口を出さないから。
ぺきりとプルタブの音。
19:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:22:22.99 ID:3iKMEwHU0
春が見えてきつつはあったけれど、まだ冬の色合いが濃い季節だった。
そうだ、ちょうど今頃だった。昼は偶に暖かい時があるけれど、夜はめっきり冷えるから、着るものに困る。
その日も散々迷って、暑い分には脱げばいいかとコートとマフラーをしていった。
いつもの電車に乗って、いつもの道を歩いて、あぁやっぱり暑かったなぁ、なんて少し後悔しながらコンビニに寄った。
20:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:22:48.48 ID:3iKMEwHU0
「あの頃765プロはアイドル事務所やったし、移籍の判断はおかしくなかったんやと思う。
……でも、あれを切っ掛けにか、所属しとる人の年齢があがったからかは知らんけど、
765プロもより広い方向へ舵を切った。それを待つわけには、いかんかったんか?」
それは外側からみていても、わかった。
21:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:23:31.28 ID:3iKMEwHU0
「その後やな。『志保ちゃんのこと、あまり怒らないであげて』……そう言うたんや」
掌で抱えていた缶が、しんと冷たく感じた。
体はコタツでぽかぽかしているのに、指の先は冷たい。
私は缶から手を離して、コタツの中へそっと差し入れる。
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