9: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 22:57:58.03 ID:FQ763ukmo
「アイドルかぁ……」
だらりと脚を伸ばして天井を見上げました。アイドルに憧れていないと言ったらそれは嘘になるのでしょう。テレビの中で歌って踊るキラキラとした姿に憧れるのは女の子ならみんな……というのは流石に言い過ぎでしょうけど、私は憧れていました。でも私はドジでのろまで。あのテレビの中や、ステージで見た女の子たちみたいに華麗に踊ることは難しいと思っていました。巫女舞でドジをしたことはないけど、きっとそれとは違う。
10: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 22:59:15.78 ID:FQ763ukmo
「……どうしよう」
私の中の天秤はアイドルをやりたいという気持ちに傾いていました。でもどこかで『私なんかがアイドルなんて』という私もいて。さっきからずっと考えが堂々巡りしてしまいます。バタバタと脚を揺らしてみても水面みたいに私の思考に波は起こりません。
11: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:02:58.36 ID:FQ763ukmo
──
12: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:03:42.05 ID:FQ763ukmo
「あっ、おはようございます!」
13: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:04:26.04 ID:FQ763ukmo
「あ、そういえば……なんでスーツ姿で神社に来たんですか?」
届いた紅茶にミルクを混ぜながら気になっていたことを尋ねました。新年の神社で浮いていたのが、紅茶へと注がれたミルクと何故か重なって見えたからでしょうか。
14: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:05:24.79 ID:FQ763ukmo
そうしてお互いに落ち着いたら、彼は事務所のことや契約したら東京で活動するために転校する必要があること、その場合は事務所が所有する女子寮に住むことができることなどを説明してくれました。ふむふむと頷きながら、所々難しいところはありましたが、それを言うと分かりやすく説明してくれたので問題はありませんでした。
その説明は私が思っていたよりもアイドルというのはキラキラしていないんだということを知らされました。それでも私にとっては今までの私の中の世界とは全く違っていて魅力的でした。
「……どうします?」
15: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:06:12.06 ID:FQ763ukmo
「直感……?」
首を傾げながら、でもその目は真っ直ぐで嘘を吐いているようには見えませんでした。『可愛かった』とかそういうような言葉が出てくるのかな、なんてドキドキして身構えていたせいもあってか、その返答に肩透かしをくらったような気持ちになりました。
ぽかんとした表情になっていたのでしょう。慌てて身振り手振りでなにかを言っていますがなにも入ってきませんでした。だって、そんな姿が取り繕っていなかったから。その姿を見る私もなんだか照れ臭くなって、私の心がこの人とならきっと大丈夫だと予感していました。
ふふっと笑いが漏れました。口元を手で隠してくつくつと。今度は彼の方がぽかんとした目を丸くしています。かと思えばバツが悪そうな表情になって外を眺めてしまいました。
16: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:07:12.24 ID:FQ763ukmo
──
17: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:08:51.58 ID:FQ763ukmo
「やっぱり混んでますね……」
「まあ仕方ないな、大晦日だし……」
18: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:10:12.05 ID:FQ763ukmo
参拝を終えた帰り道、繋いだ手をぶらぶらさせながら夜空を見上げると雲の切れ間からお月様が顔を覗かせていました。幻想的に見えて声が漏れました。それに釣られたように見上げたプロデューサーさんも同じように歓声を漏らしていました。
19: ◆u71RyimI2MeR[sage saga]
2018/01/04(木) 23:11:07.52 ID:FQ763ukmo
こんな道端で抱きつくなんてどうなのかな、って思いましたがおめでたい日だしきっと大丈夫、と何の根拠もないままに抱きしめました。
こんな場所で、とプロデューサーさんがきょろきょろ辺りを見まわしているのが分かります。
「……もうっ、私のことだけ見てくださいっ!」
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