1:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:41:39.88 ID:2D1W7Azp0
・アイドルマスターシンデレラガールズ及びスターライトステージの二次創作です
・ト書き形式ではないです
・実験的な語り口なのでちょっと読みにくいかも
・メインは浅利七海ちゃん!
・S(すこし)F(ふしぎ)な話かもしれません
・約5000字、数レスで終わります
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:42:52.35 ID:2D1W7Azp0
――サンタさん、いなくなっちゃったんだって。
十二月二十六日。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:44:03.22 ID:2D1W7Azp0
良いお年をー、って手を振って、みんなと別れて。
青森の実家には一人で帰った。これでも十四歳だし、中学生だし。新幹線だって七海だけで乗れる。
駅からは父さまに車で迎えに来てもらった。この時期はマグロが旬だから、年末年始でも漁に出てることが多いけど、今年は上手く時間を合わせてくれたらしい。
七海がアイドルになって上京して以来だからか、しかめっ面で運転する横顔はどこかほっとしたみたいだった。
父さまも寂しく感じることがあったのかな、と思う。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:45:20.08 ID:2D1W7Azp0
料理に舌鼓を打ち、そのうち新年あけましておめでとうございますのあいさつをして、量産された酔っぱらいを部屋の隅に追いやって、まとめて布団を被せてから。
急な父さまの誘いで、初日の出を見に行くのを兼ねて、近場の夜釣りスポットに向かった。
背丈より長い釣竿と釣ったおさかなを入れるクーラーボックス、あとは餌やらあったかい飲み物やらをひとしきり抱えてしばらく歩くと、真っ暗な海が見えてくる。
天気よし、波もそこまで強くない。強い潮の匂いがなんだかとても懐かしくて、ああ、帰ってきたんだなって気持ちになった。
糸が絡まないよう父さまとは少し離れた場所で釣り糸を放る。ひゅるるる、と風を切った餌付きの針が遠くに飛んでいって、音もなく水面に沈んでいく。
5:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:46:30.09 ID:2D1W7Azp0
気づいた時には、七海は空を飛んでいた。
あまりにも強い力で引っ張られて、身体ごと宙に投げ出されたんだとようやく理解した。
父さまの声が聞こえる。聞こえる声が遠ざかる。
ああ、七海、釣られちゃったんれすか。まさにおさかなの気分れすねぇ。
冗談めかして呟いたような気がする。そんな余裕なかったはずだけど、現実離れした状況の中で、寒空を風切って飛んで、落ちていく感覚が長過ぎたからかもしれない。
6:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:47:46.12 ID:2D1W7Azp0
それから。
かすかにだけど、覚えてることがある。
何か大きなものが、背中を押したこと。
七海の唇から息を送り込まれたこと。
水の中なのに、誰かの声が聞こえたこと。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:49:18.98 ID:2D1W7Azp0
ひとりになった病室で、七海は布団にくるまって考える。
こどものころに読んだ人魚姫の絵本だと、最後に人魚姫は泡になって消えてしまう。
初めて読み終えた時、なんだかすごく悲しくて、母さまにどうしてって飽きるほど質問を繰り返した。
消えちゃうくらいなら、どうして人間の足を手に入れようなんて思ったのかな。
母さまは曖昧に笑いながら、答えはいつか七海が見つけなさい、って諭すように言い聞かせてくれた。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:50:41.86 ID:2D1W7Azp0
以上です。
スターライトステージにおける七海のウワサ(昔、海で溺れたときに、大きな魚のような何かに助けられたらしい)、
そしてイヴ・サンタクロースの『渚のサンタクロース』が発想元です。
ハンス・クリスチャン・アンデルセン作『人魚姫』は悲恋の物語として有名ですが、本来泡になった後、人魚姫は風の精に生まれ変わるのだそうです。
その辺りを踏まえて読んでいただけると、物語の未来について考える何かがあるかもしれません。
8Res/12.10 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20