7:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:49:18.98 ID:2D1W7Azp0
ひとりになった病室で、七海は布団にくるまって考える。
こどものころに読んだ人魚姫の絵本だと、最後に人魚姫は泡になって消えてしまう。
初めて読み終えた時、なんだかすごく悲しくて、母さまにどうしてって飽きるほど質問を繰り返した。
消えちゃうくらいなら、どうして人間の足を手に入れようなんて思ったのかな。
母さまは曖昧に笑いながら、答えはいつか七海が見つけなさい、って諭すように言い聞かせてくれた。
いつか。
それが今なんだとしたら、七海は思う。
もし、消えちゃうことが最初からわかってたんだとしても、一度釣られた気持ちは、どこにもいなくならない。
たとえ夢が覚めたって。
夢見たことまで、消えたりはしないんだと、そう思う。
事務所に住んでいた彼女は、本当にサンタだったのか。
実は人魚姫で、ひとときサンタクロースの夢を見て、アイドルの夢を見て、それが覚めただけなのか。
七海にも、プロデューサーにも、わからない。
けれど確かに、あそこには彼女がいた。イヴ・サンタクロースというひとがいた。
溺れる七海を救ったひと。サンタクロースから、人魚姫になった女の子。
クリスマスが終わって、年が明けて、その先もずっと続いていく。
夢から覚めて、サンタなんていないと気づいてからも、七海はまだ、アイドルのまま。
どこかでまた、泡になったかもしれない人魚姫に会えることを、信じている。
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