4:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:45:20.08 ID:2D1W7Azp0
料理に舌鼓を打ち、そのうち新年あけましておめでとうございますのあいさつをして、量産された酔っぱらいを部屋の隅に追いやって、まとめて布団を被せてから。
急な父さまの誘いで、初日の出を見に行くのを兼ねて、近場の夜釣りスポットに向かった。
背丈より長い釣竿と釣ったおさかなを入れるクーラーボックス、あとは餌やらあったかい飲み物やらをひとしきり抱えてしばらく歩くと、真っ暗な海が見えてくる。
天気よし、波もそこまで強くない。強い潮の匂いがなんだかとても懐かしくて、ああ、帰ってきたんだなって気持ちになった。
糸が絡まないよう父さまとは少し離れた場所で釣り糸を放る。ひゅるるる、と風を切った餌付きの針が遠くに飛んでいって、音もなく水面に沈んでいく。
持参してきた折り畳みの椅子に座り、手元の竿を少しずつ揺らして、おさかなが食いつくのをじっと待つ。
陽が昇るより早い時間に帰ってくる父さまを待ったり、こうして夜釣りに付き合ったりは何度もしてきたから、夜更かしはへっちゃらだ。
夜釣りの最中、父さまはぽつぽつ七海に質問を投げかけた。
東京はどんなところか。
アイドルの仕事はどうか。
向こうで友達はできたか。
こっちに戻りたくはなってないか。
ぶっきらぼうな言葉は、心配の裏返しなのかもしれない。
だから七海はひとつひとつ、なるべく丁寧に答えた。
東京の暮らしは初めてだらけだけど、そこまで困ってないこと。
アイドルの仕事は本当に楽しいこと。
同年代の友達、頼れる先輩、かわいい後輩がいっぱいできたこと。
ときどき帰りたくなるけど、それでも今は向こうで頑張りたいこと。
あれこれ話してる間はちっともおさかなが引っかかってこなくて、でもこうやって待つ時間は全く苦じゃなかった。
釣りは待つ時間も醍醐味だし、久しぶりに父さまとお話しできたのが嬉しくもあった。
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