3:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:44:03.22 ID:2D1W7Azp0
良いお年をー、って手を振って、みんなと別れて。
青森の実家には一人で帰った。これでも十四歳だし、中学生だし。新幹線だって七海だけで乗れる。
駅からは父さまに車で迎えに来てもらった。この時期はマグロが旬だから、年末年始でも漁に出てることが多いけど、今年は上手く時間を合わせてくれたらしい。
七海がアイドルになって上京して以来だからか、しかめっ面で運転する横顔はどこかほっとしたみたいだった。
父さまも寂しく感じることがあったのかな、と思う。
マグロの遠泳漁は一回一回の期間がすごく長い。場合によっては一年くらい帰ってこないこともある。
だから船に乗るひとたちはみんな明るくて、ちょっと荒っぽいけど素揚げしたカレイみたいにカラッとした性格の、豪快な海の男だ。
その中では父さまは口数少ない方だけど、怒る時はすごい剣幕で怒る。荒くれたちをまとめる船長らしい、怖くてかっこいい七海の父さま。
久々のおうちは全然変わってなくて、七海が着いたころには大宴会の真っ最中だった。
マグロ船のお仲間さんたちと親戚一同と近所の見知った家族が揃ってわいわい酒盛りしてて、日本酒とか焼酎とかをそこかしこでラッパ飲みする惨状が見える。
山積みの料理はこんなに人数いるのにまだまだ減る気配がないし、むしろ今も台所で作ってるのか追加されてってるし。
広い客間の端っこには飲み過ぎで倒れた敗残者が雑に転がってる。ひどい。でもこれが毎年の浅利家の風景だ。
七海を見つけたみんながわーっと騒ぎ出して、おかえりーひさしぶりーってあったかい言葉に混ざって、よっ、アイドル七海ちゃん! なんか芸やってくれーとか指笛吹き始めるおじさまたちが大量にいる。
アイドルは芸人じゃないんれすけろね〜、って返しながらおさかなあるあるモノマネをしてみせて、会場大爆笑。もしかしたら本当に芸人でもやってけるのかもしれない。
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