2:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/03(水) 22:42:52.35 ID:2D1W7Azp0
――サンタさん、いなくなっちゃったんだって。
十二月二十六日。
そんな噂を耳にしたのは、誰からだったろうか。
たぶん七海と同じくらいの歳の子だと思うけど、もしかしたら大人のひとたちかもしれない。
事務所に所属してるアイドルは本当に多くて、みんなの顔や名前や声は覚えていても、他愛ない雑談の内容までははっきり覚えてないものだし。
もともと不思議な人だったから、捜索願とかは出さなかったらしい。
相棒のトナカイと一緒にそのうちふらっと戻ってくるかもしれないなんていう人もいて、物置に残されてた生活の跡とか、そういうのはそのままにしてあった。はっきり行方不明になったとは、誰もが信じていなかった。
事務所全体がそんな調子だからか、単に年明けが近いからか。
どこかふわふわした空気の中で七海がその話を聞いた時も、何となく「あの人れすかね〜」なんてぼんやり頭に浮かべてみたけれど、実のところそこまではっきりイメージできたわけじゃなかった。
自分でサンタクロースです〜、と名乗るアイドルの人を、この事務所内で七海は一人しか知らない。
でも、イヴ・サンタクロースという名前とか、きらきらした白くて長い髪とか、日本人離れした面立ちとか、夜空の星みたいに綺麗な瞳とか、そういうことはわかっても、どんな人だったのかは全然わからない。本物のサンタだったのかも。
もしかしたら七海たちはずっと幻を見てて、実はこの事務所にサンタクロースなんて初めからいなかったんじゃないかなって。
クリスマスが終わって、夢から覚めたみたいに、ようやく気づいちゃっただけなのかなって。
今になって、そう思う。
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