サターニャ「大悪魔になるということ」
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1:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:39:01.70 ID:GlK7P5xA0
「遂に、遂に大悪魔になったわ!」

「おめでとうございます、サターニャさん!」

全身を跳ね上げ喜びを表現している赤髪の少女と、その姿を嬉しそうに眺める銀髪の少女。
二人がすっかり日も落ちた時刻にも関わらず騒いでいるのには理由がある。

まず大悪魔、という単語について説明しなければならない。

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2:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:40:34.79 ID:GlK7P5xA0
これは役職として存在するわけではなく、サターニャと呼ばれた赤髪の少女本人が定めた個人的なものに過ぎない。
特に捻りもなく強大な力を有した悪魔が名乗るに値するものらしく、子供の夢のようなものである。

その基準となるラインに届いたと本人が判断したのだからそれはきっと大悪魔なのだろう。

以下略 AAS



3:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:41:19.89 ID:GlK7P5xA0
自負するだけあり、その力は今や魔界全体で見ても上から数えた方が早いほどの域にある。
元々身体能力など光るものがあり、かつ妙に自らに対しシビアなところがある彼女が強大な力を有するに至ったのはそうおかしいことでは無かったのかもしれない。

また、寝食を共にし、その並々ならぬ努力を側で支え続ける銀髪の少女、ラフィエルの存在も大きなところであった。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:42:24.68 ID:GlK7P5xA0
……

「では今日は大悪魔サターニャ様生誕祭ということでぱーっと祝いましょう」

「……と思ったのですが材料が尽きかけてますね、買ってきます」
以下略 AAS



5:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:43:13.71 ID:GlK7P5xA0
この時彼女の頭上に目を移したことを、どれほど後悔しただろうか。
以前目にした時には、確かにそこに燦然と佇んでいたはずの環。

その環の、昏く、輝きを失った姿を見てしまったのだから。

以下略 AAS



6:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:44:08.83 ID:GlK7P5xA0
……

次の日すぐに実家を目指し、一人魔界へと降り立った。
残念ながら家族は出払っていたが、気にせず忍び込む。
そして外の明るさと裏腹に、一面に影を落とす小さな書庫へと足を踏み入れる。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:45:28.33 ID:GlK7P5xA0
経年劣化で掠れかけた文字の中から目的の情報を見つけ出し、しばし読み耽る。

「……記憶違いだったら良かったのにね」

途端にその本が忌々しいものに感じられ、乱暴に書棚へと突っ込み戻した。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:46:47.90 ID:GlK7P5xA0
……

「なによ、肝心な時に役に立たないわね……!」

帰って早々、魔界通販のカタログに端から端、隅から隅まで目を通した。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:47:37.03 ID:GlK7P5xA0
「……何かお悩みでも?」

「あーいいわ、気にしないで」

心配で堪らず声を掛けてきた彼女にも、苛立ちからぶっきらぼうな返事を返してしまう。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:48:31.91 ID:GlK7P5xA0
「気にするなって言ってんでしょ!!」

だけど今は、その激励にさえ無性に苛立ちが募って。
差し伸べられた手を、私は勢いよく跳ね除けることとなった。

以下略 AAS



11:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:49:28.07 ID:GlK7P5xA0
「ご、ごめん……なさい……」

続けてその顔に悲しみが湛えられていく。
違うのに、そんな顔させたかった訳じゃないのに。
謝らなきゃ。こっちこそごめん、と。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:51:14.54 ID:GlK7P5xA0
「……」

「さ、サターニャさん……?」

「くだらない」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:52:04.07 ID:GlK7P5xA0
「ち、違……私そんなつもりでは……反省しますから……」

「あんたがどう思ってるかなんてどうでもいいのよ」

「現に私がこう感じたことに変わりはないんだから」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:53:25.10 ID:GlK7P5xA0
……

足取りさえおぼつかない状態ながら、なお余りある強大な力で小規模の結界を展開する。
今から見せる無様な姿を千里眼に捉えられ、悟られることがないように。

以下略 AAS



15:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:54:47.90 ID:GlK7P5xA0
「くっ……う、ううぅぅ……!」

涙をとめどなく溢れさせ、悲嘆に暮れる。これほど辛い経験なんて久しく味わってはいない。

なにしろ、今まではいつも側で支えてくれる相手が居たのだから。
以下略 AAS



16:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:56:04.84 ID:GlK7P5xA0
だからと言ってただ逃げたとしても全力で探しにくるだろうし、事情を説明し離れようとしても付いてきてしまうだろう。
喜ばしいはずの好意の深さまでもが枷となっていた。

ならば、その好意を崩してしまえばいい。修復不可能なほどに。
きっぱりと切り捨て、私じゃない相応しいパートナーを見つけてくれればいい。
以下略 AAS



17:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 16:58:13.44 ID:GlK7P5xA0
……

飴を舐め、平静を保ちつつ教室へと歩を進める。

今は私が一方的に嫌ったという関係にある。私を切り捨ててもらうなら、向こうから嫌われる必要があるわけだ。
以下略 AAS



18:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 17:00:01.28 ID:GlK7P5xA0
だめだ、ラフィエル本人は自分に非があると思い込んでしまっている。これじゃ何をしても自分を責めるだけだ。

どうしたものかと考えていると、視界の端に紫色の髪が揺れた。

「おはよ、サターニャ」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 17:00:42.78 ID:GlK7P5xA0
「……え?」

「何馴れ馴れしく話しかけてるの? って言ってるんだけど」

「な、何言って……」
以下略 AAS



20:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 17:01:34.09 ID:GlK7P5xA0
暴挙を目の当たりにし、視線に敵意が宿る。
無論ヴィネットだけではない、ラフィエルにも。

なんでこんな酷いことが言えるんだ、と何処か他人事な自分がいた。
そうでもしないと、心が保ちそうにないから。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER
2018/01/03(水) 17:03:04.82 ID:GlK7P5xA0
「……ご名答、この飴なんだけどね」

途端、全員の目が少しばかり穏やかなものに変わる。
なんだ、何かと思ったら魔界通販のせいか……そんな日常の一コマに過ぎなかったのか、と。

以下略 AAS



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