北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:41:29.68 ID:vyCd+JK40
更衣室に案内され、事務所で貸し出しているレッスン着に着替える。それからレッスン室に入ると、まだ時間には余裕があるはずなのに、すでにたくさんの人がいた。
アタシは後ろの隅のほうに陣取り、ひとりで周りを真似てストレッチをした。我ながらびっくりするぐらい体が固かった。
ほどなくして、黒髪を低いサイドテールにした女性が入ってきて、部屋にいる人たちが整列した。あの人がトレーナーさんということらしい。
「まず私がやって見せるので、みなさん同じように動いてくださいね」
以下略
AAS
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:43:10.18 ID:vyCd+JK40
多人数のダンスレッスンは、平日は毎日行われていた。
次の日、また次の日も、アタシはこのレッスンに参加した。そして、いつも途中でプロデューサーがやってきてストップをかけた。「まだできる」とアタシがいくら言い張っても、半ば強引にレッスン室を追い出された。
歯痒かった。疲れ果てていたのは確かだけど、アタシはもっとレッスンをしたかった。もっと早く、追いつきたかった。
ある日、レッスン開始から数十分経過したころ、「おじゃましますけど……」と言って、乃々ちゃんがレッスン室に入ってきた。
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:44:45.38 ID:vyCd+JK40
にっこりとほほ笑んだトレーナーさんが、ラジカセの再生ボタンを押した。
流れ出したのは、レッスンに使っていたのと同じ音楽だ。乃々ちゃんがおどおどと踏み始めるステップも、さっきまでアタシがやっていたのと同じもの――だけど、
これが本当に同じものかと思った。
初心者用の簡単なダンス、そのはずなのにアタシは、いや、この場にいる全員が、乃々ちゃんから目を離せなくなっていた。
レッスンでトレーナーさんが手本として見せていたのは、定規で測ったような正確なダンスだった。乃々ちゃんのはそれとは違い、なんとなく、ところどころに若干のズレ、揺らぎのようなものがある。だけど直感的に、その揺らぎこそが目を離せなくなる要因だと思った。
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:46:23.13 ID:vyCd+JK40
次の日は杏がやってきた。
そのときはちょうど休憩時間だった。もしかしたら休憩になるのを待っていたのかもしれない。
「おー、ヘバってるヘバってる。加蓮ちゃん帰るよー」
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:47:14.68 ID:vyCd+JK40
「……努力は無駄ってこと?」
「努力ねー」
杏はあざ笑うように口元をゆがめた。
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:49:04.59 ID:vyCd+JK40
シャワーを浴びて部屋に戻ると、プロデューサーが机になにかの書類を広げ、杏と乃々が横からそれをのぞきこんでいた。
「プロデューサー、いたんだ」
「ああ加蓮、レッスンお疲れさま。今帰ってきたところ」
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:50:41.19 ID:vyCd+JK40
「よし」
「あの、さっき300人とか400人とか聞こえたんだけど、まさかお客さんの数じゃないよね?」
「もちろん客の人数に決まってる」
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:52:04.40 ID:vyCd+JK40
プロデューサーは、打ち合わせがあるとかで再び外に出て行った。
いまいち現実感が湧いてこない。アタシがアイドルとしてライブをする? 本当に?
それに杏も乃々ちゃんも、仕事はしないんじゃなかったの?
「どうなってるんだろ……」
以下略
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:53:45.67 ID:vyCd+JK40
プロデューサーの指示により、アタシは今までのレッスンに出るのをやめ、ライブに向けたレッスンに取り組むことになった。
トレーナーさんは呼ばずに、レッスン室が空いている時間を使って部署内だけで行うらしい。
やはりネックとなるのはアタシの実力だけのようで、杏と乃々ちゃんに関しては、誰も、なんの心配もしていないようだった。
「とりあえずいつもみたいにやってみて」
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:54:59.37 ID:vyCd+JK40
次に、アタシが歌う曲を決めることになった。
プロデューサーが見繕ってきた候補曲を流し、みんなで聴いて協議する。
CGプロには何度も所属アイドル同士でカバーしあい、ほぼ共有みたいな扱いになっている曲がいくつもある。その中から、曲の調子や振り付けの難易度、曲自体の知名度などを考慮して選択する。最初はアップテンポで有名なやつがいい、次は落ち着いた曲がいいかもしれない、と2曲はすんなりと決定した。さて、あとひとつはどうしようかと悩んでいたところ、
「あれ? これ、歌は?」
以下略
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◆ikbHUwR.fw
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2017/12/31(日) 22:56:25.20 ID:vyCd+JK40
ライブで披露する曲が決定したことで、アタシは歌の練習も始めた。
「歌、うまいですね」
最初のボーカルレッスンのあと、乃々ちゃんが感心したようにつぶやくのを聞いて、少し嬉しく思った。ここに来てからちゃんと褒められたのって、これが初めてかもしれない。
以下略
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